<全国高校野球選手権:弘前学院聖愛6-0玉野光南>◇11日◇1回戦

 春夏通じて初出場の弘前学院聖愛(青森)は玉野光南(岡山)に快勝。青森県勢では68年三沢以来、45年ぶりの甲子園デビュー戦勝利となった。

 りんご畑の広がる津軽地方からやってきた「りんごっ子」が初戦を突破した。弘前学院聖愛の右横手投げのエース小野憲生(3年)が緩急をつけた丁寧なピッチングで4安打完封。8回に1死三塁のピンチを迎えても「ここが力の見せどころ」と闘争心に火が付き、三振と右飛に打ち取った。

 チームも盤石の試合運びで付け入る隙を与えなかった。2回に先制すると、4回には主将の3番一戸将内野手(3年)のソロアーチで引き離し、後半にも着実に加点するなど10安打6得点。原田一範監督(35)は「甲子園練習では硬かったのに…。今日はすべてうまくいった」と、力を出し切ったナインをたたえた。

 全員が津軽出身で、ベンチ入りの半数が付属中の硬式チーム「弘前聖愛リトルシニア」に所属していた。01年創部時から指揮する原田監督が掲げる「津軽から日本一」を目指し集結。「個々の能力ではエリートに勝てない」(原田監督)と、徹底的に組織力を高めた。青森大会で第1シードの青森山田、昨夏まで3季連続甲子園準優勝の八戸学院光星の“私立2強”を倒した。6月末の仙台育英との練習試合には3-1で勝利。強豪校を倒してきた実力を甲子園でも証明した。

 初出場ながら暑さ対策も万全だった。弘前を出る前には気温50度のビニールハウスで練習し、1日に関西入りしてからもサウナ通いを続けた。この日もレギュラー全員が汗を吸収しやすい長袖を着用。「回を追うごとにきつかったけど楽しんでやれた」と小野。最後まで集中力が切れなかった。

 実家でりんご農家を営む選手がいることもあり、原田監督がチームにつけた愛称“りんごっ子”。玉野光南は桃の名産地岡山代表。「りんごは今の時期まだ青い実じゃないですか。桃は今、熟してるんでやばいかなと思ったんですが…」と原田監督はおどけた。本物のりんごの収穫にフライングして、青森の球児が甲子園で大きな白星をつかみとった。【高場泉穂】

 ◆弘前学院聖愛

 1886年(明19)、弘前教会内に来徳女学校として創立された私立校。50年に現校名。00年から男女共学、06年中学も開設。生徒数は676人(女子455人)。野球部は01年4月創部。所在地は弘前市大字原ケ平字山元112の21。山上猛美校長。

 ▼弘前学院聖愛が快勝した。青森県の甲子園経験校は通算17校目だが、過去16校の甲子園デビュー戦は1勝15敗。勝ったのは68年三沢以来、45年ぶり2校目となった。当時の三沢も7-0で完封発進。翌年に松山商との決勝再試合を演じたエース太田幸司が、2年生ながら鎮西を1安打に抑える衝撃的な快投を見せ「スタルヒン2世」と騒がれた。

 これまでの青森県勢は82年に木造が佐賀商・新谷にノーヒットノーランを許すなど、初出場時に打線が湿った。弘前学院聖愛は10安打で6得点。同県勢のデビュー戦6得点以上も三沢以来で、投打がかみ合った。【織田健途】