<全国高校野球選手権:延岡学園10-0弘前学院聖愛>◇18日◇3回戦

 「りんごっ子」の夏が終わった。初出場の弘前学院聖愛(青森)が延岡学園(宮崎)に敗れ、8強入りはならなかった。3回に先発・一戸将(3年)のけん制悪送球で失点。右横手エース小野憲生(3年)と2度ずつマウンドに上がるも、5、6回にそれぞれ4失点と相手打線を止められなかった。打線も散発6安打と流れを引き寄せられなかった。それでも聖愛ナインは最後まで笑顔と礼儀を忘れず、初めての甲子園で輝きをみせた。

 相手側アルプス、バックネット裏、自校のアルプス、3方向にそれぞれ「ありがとうございました」と礼をし、温かい拍手に包まれると、聖愛の一戸はこらえきれなかった。「今までのことを思い出して涙が出てきました」。津軽出身の部員38人で挑んだ初めての甲子園が終わった。

 1プレーが勝負を分けた。3回1死二、三塁。一戸が二塁にけん制も「ボールが抜けてしまった」。悪送球で遊撃手がボールを追う間に先制点を許した。2戦連続完投の小野に代わり先発。初の甲子園マウンドに「気持ち良かった」と好投を続けたが、このプレーでリズムが崩れた。

 5回、延岡学園先頭の柳瀬に中越え二塁打を打たれたところで、小野にスイッチ。だが、小野も2死三塁から3安打などで4失点。「スライダーがカットされ投げる球がなくなった」。その後も延岡学園打線を止められない。再び一戸、小野と継投するも10点を失った。

 それでも2人は攻めた。7回に3者連続三振に仕留めた一戸は「最後まで自信を持って投げた」。インコースに切れのあるボールを投げ続けた。小野も8回、最後の打者を空振り三振に仕留めた。チームの2枚看板を背負ってきた。試合後、2人は「今までありがとう」と声をかけ合った。一戸は「最後まで信じ合った。小野は頼りになるエースだった」。笑顔を見せながらの、堂々としたピッチングだった。

 最後に聖愛らしさがあふれた。9回2死走者なし。打席に立つのはチームの「笑い担当」と三塁コーチを務める木村大輝(3年)。圧倒的な劣勢でも、6度ファウルで粘る木村の姿にベンチが沸いた。「笑顔で、笑顔でと思って打席に入りました」。10球目で三邪飛に終わったが、3年生の意地を見せた。

 3年生は6人だけ。主将でもある一戸は「苦しいことがたくさんあった。支えてくれた5人には感謝したい」と話す。県内の他の強豪チームへの進学を考え、入学してからも腰や肘の故障で「やめたい」と涙した一戸。「やってきてよかった。悔しいけど憧れの地で3回も試合が出来た」。思い出を胸に野球を続ける。

 目標の日本一には届かなかったが、県勢初の初出場2勝という偉業を残した。一戸は「またこの場所に戻ってきてほしい」と1、2年生の「りんごっ子」に夢を託した。【高場泉穂】