<全国高校野球選手権:山形中央2-0東海大四>◇19日◇2回戦

 山形中央の191センチドラフト候補右腕、石川直也投手(3年)が自己最速を1キロ更新する今大会最速148キロの直球を軸に、初の16強進出を決めた。1回戦は4回途中6失点と崩れたが、6回から5回を5安打無失点。先発して5回無安打に抑えた佐藤僚亮投手(2年)との無失点リレーで、延長10回で東海大四(南北海道)を破った。

 「1度死んだ」と開き直ったのが、思い切った腕の振りにつながった。7回裏2死二塁。山形中央・石川が上野に投じた4球目は今大会&自己最速となる148キロを計測した。「力が抜けて、いいボールだった」と、長い腕から振り下ろすこん身の直球で、空振り三振に仕留めた。

 初戦に先発して4回途中6失点でマウンドを後輩に譲った。「バッターを見るだけでいっぱいいっぱい」だったが、この日は「死ぬ気で投げた」と気迫を前面に出した。9回2死二塁のサヨナラのピンチで投直、10回1死から走者を出したが表情を変えずに、後続を三振、二ゴロに打ち取って、無失点リレーを完成させた。

 身長191センチの恵まれた体格と、大工の父貢さん(53)譲りの手先の器用さを併せ持つ。幼い頃から工作やリンゴの皮むきはお手の物だった。普段から寡黙だが、実家のある庄内町から約120キロ離れた山形中央への進学はわがままを通した。同校が10年に春夏連続甲子園に出場したことに刺激を受けた。山形県民だけでの甲子園勝利と、プロ野球選手になることを夢見てきた。庄司秀幸監督(38)から「プロに行くか、大工になるかどっちかだ」とハッパをかけられ、毎晩2キロの白米を腹におさめ、1年で体重を5キロ増やした。

 5回まで2年生左腕の佐藤僚が無安打に抑えていた。6回に石川が登板すると、観客はあっけにとられていたが、山形県大会でも無安打で交代したケースが2試合あり、2人とも意に介さなかった。「超スローボール」で話題の東海大四・西嶋を向こうに回し、大型右腕がスピードでうならせた。昨春センバツで2試合に救援登板しているため、この日が甲子園4戦目。「一番良かった。自分の投球ができた」とやっと笑った。【高場泉穂】

 ◆山形が初完封

 山形中央が佐藤僚-石川の完封リレー。夏の甲子園で山形県勢の完封勝ちは1人の投手、継投とも過去になく、史上初めて。47都道府県で山形だけ完封がなかった。センバツを含めても山形県勢では75年金子隆(日大山形)が初芝(大阪)を5-0で完封して以来、39年ぶり2度目。

 ◆毎回奪三振

 山形中央の佐藤僚、石川が東海大四戦で記録。昨年の伊藤将司(横浜)が2回戦の丸亀戦で記録して以来、81度目。