<高校野球長野大会:東海大三8-0地球環境>◇9日◇2回戦

 長野のドラフト1巡目候補、東海大三・甲斐拓哉投手(3年)が、夏初戦で自己最速タイの147キロをマークした。諏訪湖スタジアムで行われた地球環境戦に先発し、6回3安打8奪三振。7回コールド8-0で勝利した。「甲斐詣で」に大リーグ・マリナーズを含む日米12球団23人のスカウトが集結した。

 諏訪湖のほとりで、甲斐が上々の試運転を決めた。6回1死から2者連続三振に切り、毎回の8奪三振でお役御免。日米12球団23人のスカウトが見守る中、自己最速タイの147キロをマークした。「最初は相手がどんなチームでも怖い。これで波に乗れる」。初戦から早速避暑地を熱くした。

 79球の省エネ投球だった。雨の影響で、中2日予定の次戦が中1日に変わった。相手の構えで打ち気、力量を判断し、サインにも遠慮なく首を振る。「次も先発は自分だと思うし、今日は省エネです」。ピンチや上位打線の時だけ、強く腕を振った。西武鈴木編成部部長は「球に力がある。将来ローテーションに入れるピッチャー」と期待した。

 持ち前のビッグマウスには、スター候補の香りが漂う。この日は「全力で投げたのは4球」。変化球はカーブを多投し、宝刀スライダーは「2球ぐらい。まだ投げる必要ない。きついなと思わないと投げたくない」。3球投げたというツーシームは「遊びっす」と笑い飛ばした。ただ「失投が3球あった」と反省点は口にしたが、余力を残してあっさり自己最速タイを出した。

 奔放な性格だが、周囲への感謝は忘れない。女手一つで育ててくれた母伸子さん(41)がスタンドで見守った。大会前「甲子園に連れてって」と願う母に、優勝を約束した。寮から月1度実家に戻ると、祖母わか江さん(65)が作る大好物のきんぴらゴボウを必ず口にする。感謝の気持ちは、結果で伝えるつもりだ。

 幼いころ、スーパーで迷子になったオムツ姿の甲斐が、スイカを冷やすプールで1人泳いでいたのが大物伝説の始まり。中学で日本一になったが、高校では全国経験がない。96年以来の甲子園を、ラストチャンスにかける。【前田祐輔】