<高校野球大分大会:藤蔭7-1宇佐>◇12日◇2回戦

 シード藤蔭が「痛烈パンチ」で目を覚ました。2-1の6回1死二、三塁。前の回に失策がらみで1点を失ったエース堀真洋(3年)の打席だった。カウント2-3から強振した6球目が自分の顔面を直撃。ベンチで8分間治療するアクシデントに見舞われたが、この「一打」が勝利を呼び込む一打になろうとは…。

 再開1球目をファウルした後の通算8球目をフルスイング、打球は右翼芝生席で弾んだ。「真ん中の直球。芯でした」。止血のためにベンチで張ったテープは外れていた。裂傷した鼻の右側から流れ落ちる血で顔やユニホームを赤く染めながら、試合を決定づける3ランを放ったヒーロはベースを回った。

 メンタル面の強さは折り紙付きだ。日田林工時代には源五郎丸洋(元阪神)、藤蔭では森章剛(元日本ハム)らプロ選手を育てた原田博文監督(62)も「あんなことでめいる子じゃない。本当に強い子ですよ」。堀のタフネスぶりを口にしたが、2校で甲子園に通算5度出場したベテラン監督も「鳥肌が立ち、目頭が熱くなった」と、両手を大きくたたいて堀を迎え入れた。

 直後の6回裏には、大きく割れるカーブとスライダーを武器に3者連続奪三振の力投。9回はマウンドを譲ったが、8回を3安打1失点(自責0)という投球に「四球が多かったけど(自打球で)目が覚めたかもしれません」と笑いも誘った。今大会で勇退する原田監督と3年生にとっては最後の夏だ。「監督と甲子園に一緒に行きたいです」。恩師との夢へ好発進した傷だらけのヒーローは、その足で病院に向かった。【村田義治】