<高校野球広島大会>◇7月31日◇決勝

 如水館が3年ぶり夏の甲子園!

 有山卓内野手(3年)が2点二塁打を含む3安打2打点の活躍。さらにエース幸野宜途投手(3年)が先発、抑えとフル回転し、2-1で広陵に競り勝った。如水館は3年ぶり6度目の出場となる。

 優勝の瞬間を幸野と有山はしみじみと味わった。1点差に迫られた9回裏。なおも2死三塁と同点のピンチ。マウンドには先発4回1/3を無失点の幸野が再び立っている。1打同点のピンチを遊ゴロでしのぎきった。周囲が全身で喜びを爆発させる中、幸野と有山は遅れて歓喜の輪に加わった。

 この日も先制の2点二塁打など3安打し、今大会25打数12安打8打点の勝負強さを見せた有山は「甲子園を目指してやってきた」。全6戦を先発した幸野は「強かった。しぶとかった」。喜びと重圧からの解放感が、立役者2人の全身を包んだ。

 “流れ”は悪いはずだった。球場に向かうバスがエンジントラブルで、チームは分かれての球場入り。さらに「接戦勝負」と読んだ広陵に後攻をとられた。後攻を好む如水館が、先手を奪われた形。そして何よりも「本命と言われ続け、しんどかった」と迫田穆成監督(70)が言うプレッシャーがあった。

 だが、悪い流れをまずは有山が断ち切った。初回の攻撃だ。有原航平投手(2年)の前に、簡単に2死。2回戦・吉田戦で11回1安打完封するなど、切れ味鋭いスライダーが武器の広陵エースから、有山は右翼フェンス最上部に当てる三塁打で、ナインを活気づけた。「ストレートを狙った」。準決勝の広陵-広島商を研究した。前日は休日返上を訴えた主将が、スライダーをしっかりと見極めた。3回の2点二塁打もストレートだった。

 「気持ちだけは準備していた」と最後を締めた幸野は泣いた。選手、監督としても甲子園優勝経験のある名将から「体と力」を買われ、外野手から投手に本格転向したばかり。「あいつがチームのために涙を流すとは…」と迫田監督。主将の有山は腰痛に耐え背中でチームをまとめた。成長した両輪とともに、迫田如水館がいざ聖地に向かう。【佐藤貴洋】