<全国高校野球選手権:興南6-5報徳学園>◇20日◇準決勝

 夏の甲子園決勝は「島袋対一二三」の頂上対決になった。史上6校目の春夏連覇を目指す興南(沖縄)島袋洋奨投手(3年)は、12奪三振完投で初の決勝進出を決めた。報徳学園(兵庫)に甲子園ワーストの5失点を喫したが、3回以降無失点で159球を投げ抜いた。通算7度目の2ケタ奪三振は、駒大苫小牧・田中将大(現楽天)早実・斎藤佑樹(現早大)を抜き、金属バット採用後では単独トップに立った。強打の打撃陣は13安打を放ち、5点差を逆転した。

 9回裏2死三塁。マウンドの島袋の目つきが変わった。4番越井に144キロの直球を3球、143キロの直球でカウント2-2としてから、143キロの直球で相手のバットに空を切らせた。「意地で投げました。延長にはなりたくなかったので、思い切っていきました」。狙われていると分かっていても一番自信がある直球で勝利を決めた。

 土俵際まで追い詰められて、力で跳ね返した。報徳学園打線に足でかき回され、2回までに5失点。センバツ決勝での日大三戦に並ぶ甲子園でのワースト失点となった。だが準々決勝で3点差を逆転した「なんくるない」打線が力強くエースを援護。5回に3番我如古(がねこ)のひと振りで3点を返して追撃に入り、7回に4番真栄平の中前打で5点差をひっくり返した。「点を取られても負ける気はしなかった。もう1点も取られてはいけないと思いました」。島袋は尻上がりに調子を上げ、3回以降は5安打無失点。甲子園通算7度目の2ケタとなる12三振を奪った。

 我喜屋優監督(60)が主将だった42年前の4強も超えた。2年連続準優勝した沖縄水産以来20年ぶりの決勝進出だ。深紅の大旗まであと1勝。エースはセンバツ優勝後、常に連覇の期待がこもった視線を浴びてきた。沖縄大会準決勝の前は3日間、家でほとんど口をきかなかった。「プレッシャーもあったんじゃないでしょうか」と母美由紀さん(47)。そんな島袋が準決勝後「今までは思ってても口にすることはなかったけど、連覇を狙います」ときっぱり言い切った。

 センバツと同じくナインは毎朝、宿舎前の住之江公園を散歩する。センバツ優勝の時満開だった桜は今、夏の太陽に負けない青葉が生い茂る。青葉のように力強く成長した興南ナインが、再び甲子園に真夏の「興南桜」を咲かせる。【前田泰子】