驚異の勝ち運だ。全セの広島前田健太投手(27)が全38球ストレート勝負の熱投で自身球宴4連勝を決めた。3回からの2イニングを2安打1奪三振で無失点。「運があるというか…」。歴代3位に並ぶ球宴4勝目に照れ笑いした。

 先発黒田からバトンを託され、2番手で登板。1イニング目を難なく3者凡退に仕留めた直後、3回裏に女房役会沢の先制ソロが飛び出した。2イニング目は5番中村から外角149キロ直球で3球三振を奪い、最後は2死一、二塁のピンチを切り抜けた。「疲れました…。オールスターだし、真っすぐだけで来てほしいと思っているのなら真っすぐだけでいいかな、と思って」

 10日中日戦で先発して以来、中7日でのマウンド。珍しく体に疲労が残っていない状態でお祭り舞台に臨んだかいがあった。最速150キロの直球ゼロ封ショー。広島の絶対的ヒーローらしい、堂々とした立ち居振る舞いだった。【佐井陽介】

 ▼前田が10年第1戦、12年第2戦、14年第1戦に次いで通算4勝目。球宴で2年以上続けて勝利は99年第2戦、00年第2戦藪(阪神)以来6人、7度目。球宴の最多勝は山田(阪急)の7勝で、前田の4勝は3位タイ。前田はまだ黒星がなく、無傷の4連勝は通算7勝0敗の山田に次いで2人目だ。また、この試合のV打は先制本塁打の会沢(広島)。勝利投手とV打の両方を地元の選手が記録したのは、広島市民球場で行われた78年第1戦で広島の松原とギャレットがマークして以来、37年ぶり。

 【全セ】広島会沢翼捕手(27)が豪快なアーチでMVPを受賞した。両軍無得点の3回。全パ2番手ディクソンの高めに浮いた真っすぐを思い切りたたくと、打球は左中間スタンドに吸い込まれた。「真っすぐ1本で。全打席真っすぐしか狙っていなかった。これをキッカケに後半戦から頑張っていきたい」。球宴初先発でスタメンマスクをかぶり、先発黒田、2番手前田の広島2大エースをリード。計4回を無失点に抑え「うちの投手が点を取られなかったのは良かった」と、捕手としても全セの勝利に貢献した。