ソフトバンクが2年連続19度目(1リーグ制2度、パ・リーグ17度)のリーグ優勝を果たした。

 連覇が決まった瞬間、ベンチから飛び出した選手がマウンド付近で歓喜の輪をつくった。最後方から両手をたたきながら工藤監督は歩を進めた。泣きじゃくる内川とハグをかわした瞬間、笑顔の監督も目が赤く染まった。金の紙吹雪が舞う中、工藤監督が万感の思いで9度、宙を舞った。黄色いユニホームで染まったヤフオクドームのスタンドも拍手と歓声で揺れた。

 興奮冷めやらぬ工藤監督が優勝監督インタビューで声を張り上げた。

 「最高でした。多くのファンの方の前で優勝できてホッとしています。選手たちがよくやってくれた。選手たちのおかげです」

 2015年9月17日-。博多っ子の前で歴史の1ページを刻んだ。パ・リーグでは64年南海、95年オリックスの9月19日を抜き、最速の胴上げとなった。

 就任1年目とは思えぬ手綱さばきで工藤監督が“ルーキー”ながら見事に1位でゴールした。新人監督の優勝は12年の日本ハム栗山監督以来18人目。ホークス球団では46年の山本一人監督以来、実に1969年ぶり2人目となる快挙達成だ。

 投手陣が崩れないから連敗しない。4月末に3連敗は1度あったものの、同一カード3連戦3連敗は1度もなかった。チーム防御率はリーグトップだった。

 稼ぎ頭の武田は、この日のメモリアルデーに7回1失点の快投、見事に自身12勝目と優勝を重ねてみせた。無敗の守護神、サファテが1回無失点の38セーブで締めた。

 投手陣だけじゃない。打率トップ10に5人がランクイン。首位打者柳田が打線に勢いをつけた。侍ジャパン小久保監督が後継に指名した背番号「9」はトリプルスルーをほぼ確実にするなど大きく成長。シーズン32本塁打は、昨季までプロ4年間通算31本塁打を1年で上回った。

 柳田に刺激をもらったムードメーカー松田も負けてはいない。この日、内川の先制打で1点リードして迎えた4回、松田が34号ソロ、長谷川も続き2者連続アーチ。“マッチ”の一撃で打線に火がついた。どこかからでも得点が入る打線が西武投手陣から5点を奪い取った。

 今季はロングスパートで一気にぶっちぎった。交流戦で最高勝率(12勝6敗)を収め5度目の優勝。交流戦明け、6月19日の日本ハム戦でサヨナラ勝ちし再奪首。そのまま独走した。

 有言実行だった。昨年11月1日、秋山前監督からバトンを引き継いだ工藤監督は、監督就任会見でこう話した。

 「福岡で恩返ししたい。九州の方々が残ってほしいという願いをかなえることができなかった分、今日から福岡のみなさんに、今までお世話になった恩が返せるようにしたい」

 99年11月1日。工藤監督はダイエー(現ソフトバンク)から移籍前提のFA権行使を表明した。同年11勝を挙げ球団の福岡移転後初Vに貢献。パ・リーグMVPも獲得したが、当時の球団フロントとの確執で移籍を決断せざるを得なかった。当時、ファンの残留を願う署名は15万を超えた。おわび状を手書きで数年かけて送り返した経緯があった。心の中には当時の思いがわき上がる。あれから16年。鷹党へ1つめの「恩返し」を果たした。

 現役時代、プロ最多の実働29年で224勝142敗3セーブ。93、99年リーグMVP。西武、ダイエー、巨人で計11度の日本一。「優勝請負人」の工藤監督が、今度は指揮官として自身12度目の日本一を狙う。

 ソフトバンクは、日本シリーズ出場権を懸け、10月14日から始まるクライマックス第2ステージで同第1ステージの勝者と対戦する。