阪神は、四国IL・高知を退団していた藤川球児投手(35)との獲得交渉で好感触を抱いていることが4日、分かった。すでにオファーを出しており、高知・安芸キャンプを指導する金本知憲新監督(47)と2日に、指揮官就任後、初めて対面。両者ともに蜜月ムードだったという。今後、条件面の細部を詰めていく。球団最多の220セーブを挙げた剛腕のタテジマ復帰が現実味を帯びてきた。

 「火の玉ストレート」で球界を席巻した剛腕の虎復帰が現実味を帯びる。今年6月から故郷の高知でプレー後、退団していた藤川に対して金本新体制が“ラブコール”を送ってきた。両者の距離がグンと縮まったのは2日夜だった。安芸キャンプを指導する金本監督が球団スタッフ数人を交えて藤川と極秘接触。これまでは、おもに電話で意思確認していたが、指揮官就任後は初対面だという。

 古巣復帰か、他球団移籍か。大物OBの去就問題。席上での“雰囲気”に注目が集まるなか、球団首脳は「ウエルカムだろう。戻ってきたい気持ちがあるようだった。『懇親』のようなもの。これから金銭面など条件の話になる」と好感触を明かす。すでにオファーを出しており、交渉は最終局面を迎える。両者の蜜月ムードは獲得に向けて順調に進んでいる証拠だろう。

 05年はともに主力として優勝の原動力になった。性格、力量、野球観を認め合っており、金本監督は10月下旬にも球児獲得への関心を隠さなかった。「チャレンジする気持ちがあるかどうか確かめてみたい。うまいこと投げられて、実力で帰ってきてね。いい影響を与えてくれれば、プラスになる」。13年に右肘を手術したが、高知で復調を証明済みだ。阪神は先発適性、救援での球威などを高評価。この日の練習後、金本監督は「編成のことだから。編成の人たちがやっていることだから」と話すにとどめたが、見通しは明るい。

 米大リーグのレンジャーズを自由契約になった後の5月末に古巣球団としてオファーを出したが、藤川が断った経緯があった。実力を再評価した上で再オファー。争奪戦を繰り広げたヤクルト、中日は金銭面で折り合わず撤退ムードだ。藤川自身、NPB復帰について「必要だと言ってもらえたら、しっかり話をして」と話してきた。ライバル球団が消え、かつての戦友も熱視線を送る。何より、独立リーグで投げる姿をもっとも見届けてきたのが阪神だ。タイガース復帰に向けて障壁はなくなってきた。

 藤川自身はまだ態度を示さないが、今後は金銭など条件面の交渉に入っていく予定。闘志満々のマウンドさばき、誰にでも直言できるキャプテンシー、経験豊富な投球の引き出し…。周囲に与える影響は計り知れない。燃えて戦う集団にとって最強の補強を目指す。

 ◆藤川球児(ふじかわ・きゅうじ)1980年(昭55)7月21日、高知県生まれ。高知商から98年ドラフト1位で阪神入団。リリーフに専念した05年に頭角を現し、救援トリオ「JFK」の中核として活躍。12年オフ、海外FA権を行使しカブス入り。今季レンジャーズに移籍したが、5月22日に解雇。帰国し四国IL・高知でプレーした。184センチ、86キロ。右投げ左打ち。

 ◆藤川をめぐる動き 藤川が5月18日、レンジャーズの40人枠から外れ事実上の戦力外に。阪神は、受け入れ態勢を整え始めた。同月25日、藤川が自由契約となり、日米全球団と交渉が可能になった。しかし藤川は6月1日、故郷の四国IL高知に移籍することを電撃発表。9月に高知との契約が切れた藤川に、阪神は再アタックを決定。ヤクルト、中日との争奪戦も予想された中で、金本監督は10月30日に「ボチボチ話はしています」と、接触を明らかにしていた。