プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月14日付紙面を振り返ります。2011年の1面(東京版)は落合中日がソフトバンク打線を2試合連続で1点に封じ込め、連勝を飾りました。

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<ソフトバンク1-2中日>2011年11月13日◇ヤフードーム

 落合中日が敵地で連勝を飾った。12球団最強といわれるソフトバンク打線を2試合連続で1点に封じ込め、1点差ゲームをものにした。3回1死一、二塁のピンチで落合博満監督(57)が内川のバットにクレーム。グリップの形がルールに抵触していないかを確認するなど、細部も見逃さなかった。有終の日本一を目指す「オレ竜」は最高のムードで名古屋へと戻る。

 わずか1点、それで十分だった。延長10回、最後は守護神岩瀬が3人で締めくくった。圧倒的に不利との下馬評を覆して、敵地で連勝を飾った。静まりかえったヤフードームのお立ち台で落合監督は「勝てばいいです。何回やろうが、勝つに越したことはありません」と会心の笑みを浮かべた。

 12球団最高打率、そして、最多盗塁という強力な武器を持つソフトバンク打線を2試合連続で1点に封じた。「守りの野球」ができたことが最大の要因だ。先発吉見が7回途中まで1失点で踏ん張ると、浅尾、平井、岩瀬と投入して連夜の延長戦を制した。ただ、その根底には、勝利のためにはわずかな妥協も許さない指揮官の執念があった。

 3回、走者を出しながらも踏ん張っていた先発吉見が1死から連打を浴びた。一、二塁で打席に内川を迎えた。すると突然、落合監督がベンチを出ると、沸いていたスタンドは水を打ったように静まりかえった。本田球審に歩み寄ると内川のバットを指さして何かを指摘。「バットの形が変わっている。グリップに何か入れているんじゃないか。多少、太くなっているので確認してくれ、と言われました。スポンジ状のアンダーラップのようなものが一緒になっていた」(本田球審)。同球審から指摘を受けた内川は不服そうな表情でグリップに巻いていたテープの一部をはがした。

 「昨日から気になっていた。たまたま、あのタイミングになってしまったけど陽動作戦とかそういうことでは絶対ない」。こう言ったのは谷繁だ。落合監督は「いいじゃん、それは」と多くを語らなかったが、正捕手から報告を受けた指揮官が自ら確認しに行ったということのようだ。

 いずれにしても最大限に集中力を高めていた内川にとっては“水入り”となりマウンドの吉見は絶好の“間”をもらった。仕切り直しとなった勝負は初球のフォークで中飛。直後の松田も右飛に仕留めて序盤の最大のピンチを脱出した。

 自分たちの戦いを貫いての連勝で、明日からの本拠地3連戦での胴上げも見えてきた。だが「うちらしい戦いじゃないかな。1つ、1つだ。先のことは見ていないよ」と、指揮官に油断はない。すさまじいまでの勝利に対する執念を見せつけ、また1歩、有終の日本一へと近づいた。

※記録や表記は当時のもの