福留復活で再進撃だ。阪神が「日本生命セ・パ交流戦」のオリックス戦で、交流戦初の開幕3カード連続勝ち越しを決めた。立役者は不振だった4番、福留孝介外野手(40)だ。6回に25打席ぶり安打を中押し適時打で飾ると、不惑の初盗塁も成功。2回にも激走&激走で同点ホームを踏むなどハッスルした。前日サヨナラ負けしたチームは一夜で態勢を立て直し、今日9日のソフトバンク戦からパ・リーグの3強に挑む。

 白球が一直線にセンターまで転がった。無安打地獄に陥っていた4番福留が、執念打で大脱出だ。1点リードの6回2死三塁の場面。2ボールから右腕ディクソンのスライダーに食らいついた。大きく開いた二遊間を狙い打ち、三塁走者糸井を迎え入れた。ようやく出た6月初安打は、7試合ぶり、実に25打席ぶりのヒット。しかも中押しのタイムリーだ。鉄仮面だった男が、久しぶりに笑った。

 「追加点の欲しい場面でしたし、みんなが形を作ってくれて回ってきた打席だったので、後ろにつなぐこと、ランナーをかえすことだけ考えて打ちました」

 必死の形相でダイヤモンドを走り回った。2回。先頭で四球を選ぶと、続く原口の右前打で一気に三塁ベースに滑り込む。直後に鳥谷の遊撃併殺の間に、好走塁で本塁を陥れた。ヒットを放った直後にも原口の4球目にスタート。「普通」とひと言で振り返ったが、ノーマークを察知して、今季初、不惑の初盗塁を成功させた。40歳の激走に、勝利の女神もほほ笑んだ。

 「数ミリの工夫」があった。この試合で握ったバットの根元には、普段はない白いテープが巻かれていた。前日も巻いていたが、この日はさらに厚く巻いたものを練習で使用した。ちょっとした感覚の違いだが、普段から体調などによって重さの違うバットをチョイスし、ヒットを量産する。プロ19年目の野球職人が試行錯誤でトンネルを抜けた。

 誰よりも胸をなで下ろしたのはベンチにいた金本監督かもしれない。指揮官は「いや~、孝介に僕はホッとしましたね。年に1回はそういうのがあるものだし、僕はそう思っていたけど、やっぱり心配はしますね」と笑顔になった。6日のオリックス戦から慣れない左翼を任せている。チームのために奮闘する主将の復活にひと安心だ。

 帰り際に報道陣に囲まれた福留は、25打席ぶりヒットに「そういうこともあるでしょう」とさらり。思考はすでに次戦に切り替わっていた。今日9日からは博多に乗り込み、ソフトバンクとの3連戦に臨む。その後は西武、楽天と続き、いよいよパの上位3強と9試合戦う。キャプテンのお目覚めほど、心強いものはない。【桝井聡】

 ▼今季40歳の福留が17年初盗塁。満40歳以上のシーズンに盗塁を成功させた阪神の選手は、金本知憲(08年=40歳2盗塁、09年=41歳8、10年=42歳1、11年=43歳1、12年=44歳3)、矢野輝弘(09年=41歳1盗塁)に次ぎ5年ぶり3人目。

 ▼阪神は交流戦開幕からのカード連続勝ち越しを、05年の交流戦開始後初の3に伸ばした。オリックス戦の勝ち越しは、16年2勝1敗に次ぎ2年連続。京セラドーム大阪での同カードでは、15年に3連戦3連敗するなど7勝12敗と苦戦続きだったが、流れを変えた。関西ダービーは通算26勝26敗1分けの五分となった。