日本製紙石巻(石巻市)がきらやか銀行(山形市)を6-2で下し、2年ぶり4度目の都市対抗(7月14日開幕、東京ドーム)出場を決めた。先発左腕の塚本峻大(25=東北学院大)が9回6安打2失点完投し、MVPに輝いた。昨年は都市対抗、日本選手権出場を逃し、どん底だったチームを、就任1年目の前田直樹監督(38)が4年ぶり3度目の優勝に導いた。5月のJABA東北大会優勝で獲得した日本選手権出場と合わせ、チーム初の全国大会「W出場」を決めた。

 併殺を完成させた瞬間、マウンドに歓喜の輪が咲いた。完投した塚本は跳び上がってチームメートに抱きつき、喜びを爆発させた。「最高にうれしい。今年にかける思いが強かった」。入社4年目で初の代表決定戦先発にも動じず、丁寧に低めを突く投球が光った。

 昨年12月就任後の監督面談で、塚本は厳しい言葉を浴びていた。「自分が柱にならないと、という意識が足りない。もっと上を目指そうよ」。ハッパをかけられた塚本は今春、後輩の150キロ右腕宝利亮(25=近大)らと切磋琢磨(せっさたくま)を続けて成長。投手陣の柱としての「自覚」を引き出した前田監督は「春から競わせて安定したのが塚本。意識が変わった」と賛辞を贈った。

 4番小野悠介内野手(26=東日本国際大)は「責任」を植え付けられていた。前田監督は「メンタル面が大きい。チームの責任を背負える人間」と、昨年は主に1、3番だった小野を4番に固定。この日、2点差に詰め寄られた直後の7回に2ランを放つなど、4安打の小野は「打てない時も使ってくれて信頼してくれていた。自分が打ってやると思っていた」と胸を張った。

 前田監督は12年の引退後の3年間は東京で社業に専念した。「企業チームで野球をやらせてもらえるのが当たり前ではない」と痛感し、監督就任後はチーム内に規律を求めた。練習遅刻者には厳しく接するなど、部訓である「野球選手である前に社会人であれ」を徹底。チーム内に混在していた目標は「日本一」に統一し、一体感を持たせた。胴上げされても涙を見せなかった青年指揮官は「ここは通過点ですから」と一蹴。続けて「1つ1つ一戦必勝でやりたい」と東京ドームで振るタクトに思いを込めた。【高橋洋平】