阪神原口文仁捕手(25)がプロの洗礼を浴びせた。初登板初先発の楽天ドラフト1位藤平尚真投手(18)に2回、先制決勝の5号2ラン。育成出身の8年目が、高卒ルーキーに1球の厳しさを伝えた。原口は前日のサヨナラ打に続く2試合連続の決勝打で、チームでは最多6度目のV打点。打撃低迷でスタメン落ちも味わう男が、金本監督絶賛の勝負強さを存分に発揮だ。

 まだ明るい甲子園に花火が打ち上がった。2回、1死一塁。7番原口が楽天藤平の初球ストレートをフルスイングした。「風もフォローでしたし、打球方向も少しレフト方向を意識して、外の甘めに来たボールをしっかり芯でとらえることが出来ました」。打球は最深部の左中間スタンドにズドン。先制の5号2ランでプロ初登板の18歳右腕に洗礼を浴びせた。結果的に藤平はこの1発に泣いた。

 スタメン落ちもありながら、勝負強さが際立つ。これで原口の勝利打点は福留を抜いてチーム単独トップの6個目だ。前日15日西武戦では延長10回にサヨナラ打を放って歓喜のシャワーを浴びた。2夜連続のお立ち台。大歓声を浴びたヒーローは「必死のパッチで打ちました~!」とお決まりのフレーズを絶叫。勝負強さの秘訣(ひけつ)を問われると、「皆さんの応援がすごく力になる」とスタンドを沸かせた。

 たたき上げの自負がある。「テレビでは見たことがありますよ」。原口は、藤平についてそう言った。甲子園を沸かせて鳴り物入りで1位入団。高卒1年目で1軍のマウンドに立つ実力を認めながらも、打席ではクイック投球にタイミングを合わせて一撃をお見舞いした。育成からはい上がった8年目の経験も、勝負強さとは無縁ではない。

 シーズン中も指導を続ける金本監督の期待に応える連夜の活躍。原口も指揮官に感謝するように「(本塁打は)去年までならフェンス直撃だったかもしれない」と、進化の手応えを口にした。金本監督は「日本ハム戦の岡崎太一を思い出すような、2試合連続のいい活躍だった」と、うれしそうに話した。理想の打撃を追い求めて成長を続ける金本チルドレンが、また輝いた。【桝井聡】