珍しく、感情をむき出しにした。

 1点リードの6回2死一塁で楽天釜田佳直投手(23)は、ロッテ鈴木を歩かせた。前の打席で一時逆転の適時打を許した相手との対戦を避け、ペーニャを迎えた。カットボールで三邪飛に片付けると「よっしゃー」と雄たけびを上げた。3回以外、毎回走者の展開ながら6回6安打2失点の粘投で4勝目を挙げた。「与えられたチャンスで結果を出すだけ」と必死だった。

 負けられない戦いと分かっていた。福岡のヤフオクドームでは、2位ソフトバンクがオリックスと戦っていた。釜田が叫んだ少し前、ソフトバンク柳田が決勝弾となる勝ち越し2ランを放っていた。負ければ2位後退のピンチだった。釜田は「他のことを考える余裕はない」と言ったが、1点リードの3回1死走者なしでは、自己最速を1キロ更新する154キロ直球で田村を空振り三振に仕留めるなど自然と力は入っていた。

 個人的にリベンジしたい思いも合わさった。5月19日のZOZOマリンでのロッテ戦は、6回7安打3失点で翌日の同20日に出場選手登録を抹消された。2軍では、自分の持ち味を再確認した。「相手にぶつかっていく気持ちが大事」とブルペンでの投球練習から試合を想定し、投げ込みを行った。「今までは考えすぎて、投球が小さくなっていた。今はいい意味で楽に投げられている」と手応えをつかむことが出来た。

 ブルペンも釜田の粘りに応えた。7回は「ミスター0」の福山が3者凡退で切り抜け、33登板でいまだ防御率を0・00とした。8回はハーマン、最後は守護神・松井裕と盤石な継投で勝利をもぎ取った。開幕から走り続ける首位の座は、決して明け渡さない。【栗田尚樹】