ベテランの貫禄の1発が逆転勝ちの下地にあった。阪神福留孝介外野手(40)が3回に同点2ランを放った。広島大瀬良のカットボールを右翼ポール際の中段まで運ぶ豪快アーチ。今季10号となり、3年連続の2桁本塁打。今季、アーチをかませば不敗の神話も10試合に継続や~。

 だから主砲なのだ。福留はこの日も、ひと太刀で流れを一変させた。2点を追う3回、先頭2番上本が三ゴロ失策で出塁。劣勢ムードをひっくり返す、またとないタイミングで特大の1発だ。「点を取って早く追いつくんだと思っていた。まずは早い段階で追いつくことができて良かった」。1ストライクからの2球目。内角カットボールを寸分狂わずミートし、軽々と右翼ポール際中段まで運んだ。

 嫌な展開だった。相手先発は今季無傷の7勝、阪神戦には2戦2勝の大瀬良が立ちはだかった。ドラフト2位小野が1回裏に2点を先制され、完全に広島ペースの中で飛び出した値千金弾だ。10号2ランで3年連続2ケタ本塁打を達成。今季福留が1発を決めれば、これで10戦10勝、昨季からは12連勝となった。「不敗神話」に導かれるように虎は敵地で逆転に成功した。

 初回には広島鈴木に好捕されたが、右翼へフェンスぎりぎりの飛球を放っていた。夏真っ盛り。マツダスタジアムは練習中から日差しがキツく、体力を奪われがちだ。ただメジャーで過酷な遠征も経験してきた40歳はそんな状況でこそ真価を発揮する。「体重が減るとか言うけどオレは分からん。これまで減ったことない」と言い切るベテラン。「体を冷やすとかはしない。冷たいものはほとんど食べない。冷たいものはビールくらいかな(笑い)」。そう冗談めかすが丁寧な自己管理が日々のパフォーマンスを高めている。

 1点を追う9回はさりげなく4番ロジャースの逆転打をアシストしていた。1死一、二塁と打ち気にはやる場面で、いとも簡単に四球をゲット。満塁の好機をつくり出し、熱い勝利を呼び込んでいた。それでも試合後、福留は素知らぬ顔だ。あの1発が流れを変えた-。そんな問いかけには「どうかな。分からん」とサラリ。必要とあらば千両役者の役割を担い、時には仲間を支える黒子に変身できる。虎のキャプテンは頼りになる。【佐井陽介】