4回まで1失点と粘りながら、中盤に崩れた。開幕から無傷の7連勝中だった広島大瀬良大地投手(26)が、要所で制球を乱した。試合後は反省と謝罪の言葉を続けた。「今日みたいな投球をしていたら黒星はつく。こういう投球をして野手や中継ぎに申し訳ない」。自身の連勝記録とともに、チームの優勝マジックもわずか1日で消えた。

 勝ちたい理由があった。8月9日。72年前に長崎に原爆が投下されたこの日は、長崎・大村市出身の大瀬良にとって特別な1日だ。小学校低学年のころは夏休みでも学校に集まり、当時の写真を見て、当時の話を聞いた。何度も原爆資料館に足を運び、目と耳、そして胸に刻んだ。

 不思議な縁を勝利に結び付けられなかった。プロ入りから毎年8月9日はマウンドにいる。1年目の14年は先発して4回4失点で敗戦投手。15年は中継ぎ登板し、16年は2軍で投げた。「今こうやって野球ができることに感謝してプレーしないといけない」。その思いをマウンドで示した。1回に先発復帰のゲレーロのバットを内角145キロでヒビを入れると、4回は福田のバットをグリップから真っ二つだ。気持ちが球に乗ったようだった。

 だが、1-1の5回に暴投と適時打で2点を失うと、6回はこの日初の四球からピンチを招き3者連続適時打で4失点。「ブルペンから良かった。結果としてヒットをたくさん打たれた。工夫のしようがあったと思う」。特別な思いが、力みにつながったのかもしれない。【前原淳】

 ▼広島●、阪神○の結果、広島のマジックは消滅。昨年の広島は8月24日のM点灯から1度も消滅せずに優勝を決めており、広島のM消滅は91年9月25日以来。今回のように初点灯した翌日に消滅は14年9月5日巨人以来で、広島の初点灯翌日消滅は84年9月11日M16→12日消滅に次いで2度目。