万感の思いが込み上げた。6回2死走者なし。ロッテ井口は中飛を打ち上げた。二塁手前まで走り、ベンチに戻ろうとすると、マウンドでソフトバンク和田が待ってくれていた。駆け寄り「ありがとう」と声をかけた。「彼も『ありがとうございました』と。福岡は終わったなと思いました」と、穏やかに振り返った。

 若手の出場機会増を望み、いったん登録を外れる。試合前「最初の打席で1本、出ましたね。何十年前だって話だけど」と照れ笑いした。97年5月3日と覚えている。デビューの地で見せる最後の勇姿。4番DHで先発出場した。復帰登板の和田が相手。その後輩を「ケガする前より良くなっていた。みんな、千賀より速いと」とたたえた。2回は8球粘って左前打。4回は逆に空振り三振。くしくも、和田の通算1500奪三振で「すごいタイミング。貢献しなくていいのに」。うれしそうに言った。

 ダイエー時代の応援歌が流れる中、工藤監督、和田から花束を贈られた。「24日があるので。キャンプしてきます」と、おどけた。次期監督の最有力候補だが、今は一選手。来月の引退試合まで、2軍の若手と汗を流す。【古川真弥】