阪神藤浪晋太郎投手(23)が、ようやく1軍マウンドで復調の兆しを見せた。2軍戦から中2日で迎えた今季初登板の巨人戦で、7回途中まで3安打3失点。4四死球を与えたが、7四死球と大荒れだった前回16日の広島戦より制球難は解消されていた。金本監督は「ひと安心です」と納得顔だ。首位広島も敗れ、ゲーム差は7・5のまま。チームは夏の長期ロードを16勝10敗1分けで乗り切り、明日29日ヤクルト戦から甲子園に戻る。

 交代を告げられ、マウンド上で表情をこわばらせた。同学年右腕の畠との投げ合いに敗れ、充実感はない。それでこそ藤浪だ。虎の浮沈を背負う男の感情だ。

 藤浪 7回にしっかり粘れなかった。ああいう苦しいところで粘ってこそ。あそこで代えられているようでは、まだまだです。

 6回1/3で9三振を奪い、被安打3の4四死球で3失点。試合を作っただけでは満足しない。やっと、大黒柱としてのプライド、自信を復活させた。

 苦悩の3カ月間だった。開幕から制球難に苦しみ、5月27日に出場選手登録を抹消。1軍復帰した8月16日広島戦で大炎上した。9番大瀬良に死球をぶつけ、5回途中を7四死球7安打3失点。翌17日に再び登録を抹消された。2軍ではわずか10日の間に2試合計3回を投げ、前回登板から中2日での復帰戦。超異例の調整は実を結んだ。

 1回、1番陽岱鋼への3球が復調の証しだ。すべて外角低めに直球を集め、156キロ見逃し、155キロファウルからこの日最速159キロで見逃し三振。1回2死一、二塁を無失点で切り抜けると、制球が安定した。「ボールのタッチも感覚も良かった」。2回から6回までの5イニングは安打1本も許さなかった。

 両チーム無得点の7回、1死から5番村田にスライダーがすっぽ抜けて死球。1死二塁から6番亀井に右中間二塁打を浴び、先制点を献上した。7番長野には外角に外そうとした直球が抜けて暴投を記録した後、四球。ここで降板を余儀なくされたが、今季5敗目には前向きになれる要素がたっぷり詰まっていた。

 右打者への制球が課題とされる中、右6人を並べたG打線に対し、5月14日DeNA戦以来のクオリティースタート(6回以上を自責点3以内)を記録。金本監督は「5、6回までは、ほぼ(完璧)でしたね。6回までの姿を見ていると、ひと安心です。次回もあります」と納得顔だ。

 藤浪 勝ちにつながる投球ではなかった。次はもっともっといい投球、いいモノを出していきたい。

 本人は今週末の中日戦とみられる次回先発に向け、早くも気合十分。チームは夏の長期ロードを16勝10敗1分けで乗り切り、明日29日ヤクルト戦から甲子園に戻る。ようやく藤浪の状態にメドが立ち、勝負の9月戦線へ。流れは決して悪くない。【佐井陽介】

 ▼藤浪が6イニング1/3を投げて与四球3。前回登板の16日広島戦まで今季通算45イニング1/3を投げ与四球38と1イニングあたり0・8個の制球難だったが、やや持ち直してきた。昨年までプロ通算は、668イニング2/3を投げ260与四球で、6イニング1/3あたりの平均与四球は2・46だった。

 ▼阪神は今季の長期ロードを16勝10敗1分けで終えた。甲子園で毎年続けて30試合以上を行うようになった56年以降で、ロード期間中の貯金6は2位タイ。最多は68年の貯金13(15勝2敗)で、これに次ぐ63年の貯金6(10勝4敗1分け)と並んだ。