元阪神エースで関西の独立リーグ「ベースボール・ファースト・リーグ」兵庫でプレーする井川慶投手(38)が「完全燃焼」の力投を見せた。5日、鳴尾浜で古巣阪神の2軍との練習試合に先発。圧巻は3回だ。先頭北條を沈む変化球で空振り三振。原口に速球で押して140キロで空を切らせた。

 「最後、真っすぐにこだわって、すべて、真っすぐを投げたかった。腕を振れるようになってきた。(原口には)ちょっと抜けましたけど、空気を読んでくれたのかな」

 1回は連打から1点を失ったが、3イニングを1失点。今季最後の実戦登板を終えて「1年間、精いっぱいやってきて、最後、楽しくできました」と充実した表情だった。兵庫を優勝に導く原動力になった。15年にオリックスを戦力外になると、昨年2月から兵庫の練習に参加。今季は選手として14戦で無傷の11勝を挙げ、防御率1・10だった。

 今季限りで現役を引退する可能性もある。6月には「自分の球をもう1度、投げたい。1年間しっかり投げて納得いく形になれば潮時かなと思っています」と語っていた。この日、無我夢中の1年を振り返り「思い描いたシーズンで、納得してシーズンを過ごせた。自分のなかで、やりきった感はあります」と話した。

 今後の去就を問われると「まだ分からない。(球団行事が)すべて終わってから考える」と明言を避けたが、兵庫ナインと真剣勝負のシート打撃を熱望。「感謝の気持ちを込めて」と話す。現役か、引退か。03年阪神優勝に導いた沢村賞左腕が、野球人生の岐路に立っている。【酒井俊作】