沢村賞も狙える! 広島からドラフト2位で指名された熊本工・山口翔投手(18)が6日、熊本市内のホテルで仮契約を結んだ。契約金6000万円、年俸600万円(金額は推定)。今村や中崎を発掘した田村スカウトが高く評価する逸材で、球団の期待も大きい。入団時には山口と似た体形で、そこから広島のエースへと成長した前田(ドジャース)のような飛躍が期待される。

 仮契約を終えた表情は、緊張からこわばっていた。広島がドラフト指名した新人の中で、同2位の山口は最速で仮契約を済ませた。「正直、野球の試合よりも疲れを感じました」。プロ野球選手となる契約書にサインをするときには「ドキドキが止まらなかった」という。あどけなさが残る18歳だが、181センチ、75キロの細身の体に大きな可能性が詰まっている。

 球団はドラフト候補の高校生投手で最大級に評価していた。担当の田村スカウトは「いずれは先発完投。将来的に沢村賞を狙える投手になってもらいたい」と大きな期待を寄せた。「伸びしろを感じている」(田村スカウト)という才能が花開けば、球団の日本人投手では山口が憧れる前田(ドジャース)以来となる受賞も夢ではない。

 熊本工では投げ込みと走り込みによって球速が20キロ上がった。肩の広い可動域を生かした、しなるような腕の振りから繰り出される速球は最速151キロ。ただ、しなやかで強い筋力を持ちながら連動性には欠ける。ドラフト指名後に制球力向上のためフォーム修正にも着手。肉体的にも技術的にも発展途上にある。

 金の卵を数多く獲得してきた田村スカウトは「中崎と比べても引けを取らない」と今やチームの守護神となった右腕の入団前と重ねた。未完成のまま放つ速球が151キロなら、プロ仕様の肉体になれば今年薮田が記録した球団日本人最速の156キロも見えてくる。「まずは自己最速。そこから伸ばしていきたい」と山口は意気込んだ。

 憧れであり、目標でもあるドジャース前田も入団時は体重70キロ前半と細身だった。入団後に体重増に取り組み、広島のエース、そして球界を代表する投手へと成長した。「いずれは(沢村賞を)狙えるように。小さい目標から。いずれは大きい目標を達成したい。しっかり昇っていきたい」。期待の右腕がプロで描く成長曲線は、広島の未来を左右する。【前原淳】

 ○…大のお笑い好きである山口は、同郷のスターとの共演を夢見ている。趣味はお笑い番組を見ることで「とんねるずのみなさんのおかげでした」が大好き。同郷の人気芸人「くりぃむしちゅー」は「しゃべくり007」だけでなく「全力!全力タイムズ」もチェックしている。「もちろん会ったことはない。出てみたいですね」。プロで結果を残せば出演オファーもあるかもしれない!?

 ◆山口翔(やまぐち・しょう)1999年(平11)4月28日生まれ、熊本県出身。2歳で広島に移住。小4から高陽スカイバンズで野球を始め、小6のときに熊本へ引っ越した。日吉中をへて、熊本工へ進学。1年秋からベンチ入りし、2年春にはセンバツ出場。2年夏の県準々決勝の秀岳館戦ではサヨナラ死球を与えて敗戦。3年夏は3回戦で敗れた。好きな言葉は名前の由来となった「大きく羽ばたけ」。同郷の人気お笑い芸人「くりぃむしちゅー」との共演も目標。50メートル走6秒6。遠投100メートル。181センチ、75キロ。右投げ右打ち。家族は父、母、妹。