やるしかない-。阪神藤浪晋太郎投手(23)が、年男となる18年シーズンの逆襲を誓った。昨季は制球難からわずか3勝に終わったが、苦悩のシーズンに別れを告げて「結果を残す」と宣言。昨年12月に時間を費やした「専門家行脚」の成果も明かした。今季の開幕ローテ奪取、自身初のシーズン200イニング到達を目指し、リベンジに挑む。

 ゼロからの再挑戦。誰よりも現状を理解しているのが、藤浪本人だ。

 「当たり前ですよね。去年1年間ファームで過ごした人間に、ローテ当確とは言わない。それは言われなくても分かっている。やるしかない。結果を残す。シンプルなことです。それは楽しみと言えば楽しみかもしれない。今までなら沖縄でそこそこ打たれても『調整』で済んだけど、そうではなくなる。結果は求めないといけないけど、ちょっと打たれて失点しても魅力的なボール、アウトの取り方があれば、使ってもらえると思いますしね」

 17年は制球難に苦しみ、わずか3勝に終わった。逆襲へ。昨年12月は東京を拠点に「専門家行脚」を続けた。体幹、動作解析、目、理学療法、そして球の回転数などの測定が可能なトラックマン…。「どれもおもしろかった」と振り返る。

 「データをどう活用するか。そういう講義があった。他球団の選手も何人かいました。回転数やデータを見て、どういう傾向にあるか、どう生かすか。それをグラフから学び取れるようにしてほしい、と。自分のデータも去年、別の球場で取られたものがあって(新たな発見は)ありました」

 「視力というよりは、モノをとらえる時にグッと一生懸命見すぎると力が入る。全体的にリラックスして見た方が力みが取れる、とか。よく言われる『目力』はちょっと誤解されているよ、とか。自分にはない発想でおもしろかった」

 「足の使い方だったら、良かった時は地面をとらえて踏ん張って投げられていた。それが疲労や(筋肉が)硬くなったりで、使えなくなってきていた。動作解析の先生も、足の裏を縮める力が弱くなっているから、地面をとらえる力が弱くなっているよ、と。足を上げた時で言えば、腰方形筋を使って、うまく内旋(位置を変えずに体の内側へ回戦させる動き)して安定するようにしたり…。それは新しい取り組みですね。自分では実感はなかったけど、1年目、2年目、3年目と体の使い方が違ってきているとも言われた。使えていない部分がある、と。ストレッチでは追いついていないところもあるし、機能的に落ちてきたところがあるのも事実だと。若さで何とかできたけど、それが崩れるとおかしくなる、というところもあるんじゃないかと言われた。蓄積疲労のせいにはしたくないけど、それも事実として認めないといけないんじゃないかと、ということでした」

 12月は例年通り「ノースロー調整」に近い形を取った。「1月にキャッチボールをするのがすごく楽しみです。(効果が)すぐに出るとは思っていないけど、多少感覚の違いは出てくると思うから」。手応えはある。今季こそ自身初の200投球回を実現させたい。

 「目標は200イニングがやりやすい。自分の中ではケガとかで離脱しない、イニングをしっかり投げるのが先発の仕事だと思っているので。そこの価値観はずっとブレないですね」

 雪辱を期す1年。だからといって必要以上の力みはない。それは充実した準備を続けているからだろう。常にチームの勝利を最優先してきた男が、優勝を争った15年終盤は肩の強い痛みを隠して投げ続けた男が、今年は気負いすぎることなく、まずは自分の役割に没頭したいとあえて言う。

 「自分のやることをやればチームの勝利につながる。分かりやすく言えば、今年は自分のために野球をできればな、と。しっかり活躍できれば、優勝に貢献できると思うので」

 落ち着き。自然体。そこに覚悟が見え隠れする。【取材・構成=佐井陽介】

 ▼阪神の投手による直近の年間200イニング超えは、14年メッセンジャー208イニング1/3。日本人では11年能見篤史の200イニング1/3。生え抜き右腕となると、92年中込伸200イニング2/3までさかのぼる。藤浪の最多は15年の199イニング。同年は初タイトルとなる最多奪三振を獲得しており、到達できれば好成績もついてきそうだ。なお球団最多は若林忠志が43年に投げた415イニング2/3。