貫禄ピッチだ。自身初の開幕投手が濃厚な広島野村祐輔投手(28)が、今年初実戦となる西武とのオープン戦に先発。持ち味の制球力と球の切れも良く、3回無失点と上々の滑り出しを見せた。緒方孝市監督(49)の故郷佐賀での一戦。先発ローテの柱がきっちり結果と内容を残し、17安打10得点の打線とともに白星で花を添えた。

 肌寒い気候、不慣れな地方球場のマウンドも野村の妨げにはならなかった。初実戦で3回無失点とさすがの投球を披露した。味方が1回から得点を重ね、つられて大味になりそうな展開。それでも自分のテーマを突き詰め、精密機械のように制球を乱さなかった。

 「対外試合は初めてだし無事に終わってホッとしている。今までの精度をより良くすることが課題。走者を出してもゴロを打たせてゲッツーをとったり、狙い通りのところもあった。今のところ順調に来ている」

 打者の両サイドに巧みに投げ分け、2回まで4奪三振。3回はゴロがイレギュラーする安打で先頭を出したが、次の金子侑を低め変化球で二ゴロ併殺打に仕留めた。1、2回とも2人目を出塁させ「同じような形。少し投げ急いだ」と反省したが、畝投手コーチは「しっかりコントロールできていた。不安はない」と頼もしそうに目を細めた。

 人生初の佐賀での登板。試合前から盛り上がりを見せていた。両チーム監督とも同県出身。共通の高校時代の担任教師である中嶌隆之さん(82)が来場し、3人で再会を喜ぶ場面もあった。緒方監督は前売り券が早々と完売したことを自ら切り出し「楽しみだね。ヘタな試合はできんわな」と意気込んでいた。そんな舞台に野村は好投で応え、拍手を浴びた。スタンドには広陵高時代、3年夏の甲子園決勝で戦った佐賀北の部員も訪れていた。

 キャンプで独自調整を託した緒方監督は「沖縄から実戦形式のシート打撃できっちり投げていたしね」と、この内容を当然といわんばかり。このままいけば、初めて開幕投手を迎えることになりそうだ。プロ7年目。充実期を迎えた右腕は「(開幕は)目指す場所。意識して、もっとアピールしていきたい」。さらに磨きをかけていく。【大池和幸】