金本阪神が菅野攻略で痛快な開幕G倒を決めた。2点リードの3回、大砲候補の大山悠輔内野手(23)が勝利を確信させる1号2ラン。2回には金本知憲監督(49)から「孝介あたりがガツンと放り込んでくれたら」と期待されていた福留孝介外野手(40)が先制ソロを放つなど、初めて菅野に2発&12安打を浴びせて粉砕した。オープン戦の最下位から一気に打線が確変。「これまでのチームで一番強い」と話す指揮官の手応えが、現実になりそうな快勝発進だ。

 緊張が張り詰めていた頬をすうっと緩めた。大山は右翼席への着弾を確認すると、くしゃっと表情を崩した。一塁をまわったところで、珍しく右腕で小さくガッツポーズ。プロ入り初の右方向へのアーチに手応えを感じていた。

 「強引にならず、大振りではなくてコンタクトを意識していた。自分的にもすごく良いバッティングだったと思う」

 2点リードの3回だ。2死一塁で、2球目の外角高め149キロ直球を振り上げた。ふわりと舞い上がった打球はグンと伸び、そのまま右翼席まで届いた。相手は昨季沢村賞を獲得した巨人菅野。エースからの1発に「失投が少ないピッチャーなので、1球で仕留めるということを一番大事にしていた」と、言葉通りの結果に成長を感じさせた。

 豪打のキーワードは「前」だ。金本監督や片岡ヘッド兼打撃コーチから何度も言われている言葉がある。「ポイントを前にしろ」。球に力を伝え、遠くに飛ばすための心構えだ。大山は言う。「やっぱり前の方が飛びますね。糸井さんのスイングスピードなら、後ろでも対応できるとは思うけど、そのレベルにいってない。『前で前で』というイメージじゃないと差し込まれが多い感じがする」。この日は菅野の剛速球だ。外角高めの149キロも、ありったけのパワーを伝えた。

 イメージ通りの打撃だ。すり切れるほど見ている映像がある。昨年10月のクライマックスシリーズ。DeNAのウィーランドから、逆方向に強振し、右前適時打を放った。「インコースのボールを右中間にきれいに打てたので、あれは必ず生きてくると思った」。今季初戦でも、まるで右方向に引っ張っているような打ち方を再現した。

 金本監督は「右方向に素晴らしい打撃を、完璧でしたね。あれで今日行けるんじゃないかという気になりました」と胸をなでおろした。23歳3カ月での開幕戦本塁打は、ドラフト入団では77年掛布雅之の21歳10カ月に次ぐ球団2番目の若さ。幸先よくマルチ安打を刻んで開幕戦勝利に貢献し、チームの顔になりつつある大山が、猛虎の開幕ダッシュを引っ張る。【真柴健】