首位を快走する西武の強さに潜入する。26日のソフトバンク戦に敗れ5連勝で止まったが、連勝中は全試合9得点以上を記録。9点以上を挙げて5戦5勝はプロ野球史上初めてだった。連勝は18日の日本ハム戦から始まった。8回表を終え0-8と敗色が極めて濃厚だったが、終盤2イニングだけで9点を奪う大逆転勝利。強力打線の本領発揮だが、9回の浅村栄斗内野手(27)の打席に注目した。

 西武は8回裏に一挙7得点で1点差に迫った。9回も先頭源田が左前打。行け行けムードが漂ったが、続く浅村は冷静だった。日本ハム石川直が投球動作に入ると、バットを寝かせセーフティーの構えを見せた。

 浅村 引っかけて三ゴロ併殺は最悪。送ろう、と思いました。

 昨季わずか1犠打の3番打者が、自らの判断で送りバントを試みた。スライダーが高いと見送ったが、判定はストライク。2球目も146キロを見逃しストライク。あっという間に追い込まれても「しゃあない」と焦らなかった。ファウル、ボール、ファウルを挟み6球目。「右打ちで最低でも走者を二塁へ」と外寄り148キロを右前に運んだ。一、三塁と、犠打以上の結果を呼んだ。山川は四球。塁が埋まり、森がサヨナラの2点適時二塁打を放った。

 クリーンアップの犠打の試み。「1打席を大事に」と掲げる辻監督は「中途半端には、なって欲しくなかった」と、意味のある打席になったことを評価した。変化を感じたのは、橋上作戦コーチだ。就任3年目の参謀役は「賛否はある。バントのサインは出てない。クリーンアップだから、しっかり打てばいいという人もいるだろう」と認めた上で続けた。

 橋上コーチ 内川も、あそこは右打ち。そこに、うちとソフトバンクの違いがあった。今までの西武なら、2ランでサヨナラ。だけど、その確率は低い。浅村はバント出来なかった後も、なんとか右にという姿勢が見えた。あの試合の一番のポイントだったと思う。

 西武の総得点131は、断然の12球団トップ(27日現在)。得点力が首位快走の原動力となっている。ただ、21本塁打はリーグ2位タイ(1位は日本ハム22本)と、ずばぬけてはいない。24盗塁も同2位(1位はロッテ30盗塁)。足を絡めつつ豪快な打撃で点を奪うイメージがあるかも知れないが、実際は少し異なる。

 浅村 自分はどうでもいい。もう若手じゃないんで。僕や秋山さんが、そういう姿勢を見せる。後は若い人たちが気持ちよく打ってくれればいい。何のためにキャプテンを任されているのか。引っ張ってくれ、ということだと思ってます。

 点を取るための最善策は何か。一発長打もある浅村がチーム最優先で考えている。初球に見せたバントの構えは、西武の強さを象徴していた。【古川真弥】