DeNA筒香嘉智外野手(26)が横浜高の先輩、中日松坂大輔投手との対戦を堪能した。1回には他の打者よりもギアを上げて投げ込んできた144キロに渾身(こんしん)のフルスイングで応えた。試合に勝てなかった悔しさとは別の感情が湧く、特別な対戦となった。

 深くかぶったヘルメットのつばが、左にずれた。筒香は3回の第2打席初球、内角にきた140キロの直球にバットを強振した。その勢いでヘルメットがずれ、体勢も崩れた。ファウルボールは、バックネット裏上段の記者席に飛び込んだ。3球目の甘く入った直球もフルスイングでファウル。「純粋に勝負が楽しかった。いけると思った球はいつも通り思い切り振ろうと思っていた」。初回の第1打席は左飛、第3打席は1度も振らずに四球。3打席13球を楽しんだ。

 少年時代からあこがれの存在だった松坂がマウンドに立っていた。横浜高のユニホームを着て甲子園で躍動する姿は、今も鮮明に記憶に残っている。「打席に入っても走者として見ても、他の投手とはまったく違うものを感じました」。いつもと同じルーティンで打席に向かった。打席に入ると高鳴る感情はいつもと違った。追い求める力感のないスイングを少し忘れた。力いっぱい振ったバットから快音は鳴らず、1打数無安打2四球。でも全力でぶつかっていったから「結果は関係ないですね」とすがすがしく言った。

 かつて日の丸を背負って世界一になったあの松坂と、日本の主砲として対決することは、プロ入り当初想像もできなかった。格別だった大先輩との直接対決。「この機会に巡り合えたことに感謝の気持ちです。機会があれば、また勝負してみたい投手です」というのは本音。今季再戦のチャンスを待っている。【栗田成芳】