9回先頭の打席前、西武金子一は秋山に「1点ばかり見ないで、スタンドを見てから入れ」と声をかけられた。おかげで冷静になれた。ソフトバンク森の初球、高め149キロを振り抜く。左翼席最前列へ飛び込む、プロ初安打&初本塁打が飛び出した。「まさか入るとは。全力で走ってました」。二塁手前でスピードを緩め、驚いた顔をした。

 プロ5年目。昨季までは2軍でも打率2割台前半が、「ダメなら最後」と臨んだ今季に一変した。一時はイースタン・リーグ首位打者に立ち、今月12日に初昇格。ここまでの出番は同日の守備だけだったが、「1軍は打席に立ってないとか関係ない。チャンスを生かせるように」と準備していた。7回先頭、代打でプロ初打席が来た。積極的に初球から振ったのは良かったが、追い込まれても大振りして三振。自分を見失いかけた。自主トレで師事する秋山の助言が効いた。

 辻監督は「勝ててないのもあるけど、選手がちょっと違う。いつもの積極性がない」と中盤までの拙攻を指摘。それだけに、金子一の打撃には「雰囲気があった」と目を細めた。2連敗だが、元気がなかった打線が終盤につながったのは光明。新戦力出現を追い風に、まずは連敗ストップだ。【古川真弥】