ひと振りで全てを振り払った。巨人岡本和真内野手(22)が11試合ぶりの15号2ランを放ち、チームを昨年8月以来、広島戦6カードぶりの勝ち越しに導いた。逆転した直後の4回2死一塁。カウント1-2から岡田の外角高めの144キロ直球を捉え、打球は右中間席最前部へ飛び込んだ。6月26日広島戦以来、46打席ぶりの1発に「久々にいったなと。食らいついて最高の結果でした」と喜んだ。

 今の自分をかみしめた。14号から5日のDeNA戦まで32打席連続無安打。打率も3割を切り「苦しいっちゃ苦しい」と悩んだが「本当にぜいたくな悩みですよね」と現状を客観視できた。「これまでは1軍にいることもできなかったし、いても打てなかった。その頃に比べたら、今は試合に出させてもらっている。出続けられるからこその悩みだと思う」。3年間で通算本塁打は1。ホームランバッターになるべきか悩んだ過去の自分と照らせば、今が楽に思えた。

 もちろん4番の重圧は簡単に拭えない。「打順のことはあまり考えないようにしている。でも、やっぱり4番って特別ですよね…」。胸を張って重心を沈ませる構えが、いつしか背中が丸まっていった。ロッカールームで隣の阿部から「打っても、打てなくても胸を張ればいい。堂々としていろ。それが4番の仕事だ」と背中を押された。昨季まで4番を張ったベテランの金言に背筋が伸びた。

 9回に2点差まで追い上げられるも逃げ切った。「守っててしんどかった」と王者の圧を感じたが「前回3タテされていたので、なんとか勝ち越したかった。結果的に追い上げられたので、打てて良かった」と安どした。「まだ(シーズンは)半分ある。また打てない時が来るかもしれない。残りの試合も引き締めてやっていきたい」。1つの壁を乗り越えた主砲が頼もしく見えた。【桑原幹久】