阪神が2つの危機を抱え込んでしまった。敵地ナゴヤドームでの中日戦。先制したが3回に「2ラン犠飛」を許すなど逆転負けを喫した。今日1日に敗れれば単独最下位に転落し、自力優勝が消滅する可能性もある。打線も爆発力を欠く中、主砲糸井の状態も気にかかる。虎が窮地に立たされた。

 世にも珍しい失点シーンが致命傷になった。阪神が外野フライ1本で2点を献上する、屈辱的な失点を喫してしまった。3回、同点に追いつかれ、なおも1死満塁。大島が放ったライナーは中堅を襲った。予測が難しい、不規則な弾道だった。俊介は後ずさりしながら落下点に目測を合わせるのが精いっぱい。捕球すると倒れ込んだ。1度はカバーに向かう右翼中谷に中継の送球を試みようとした。

 すぐに正面へ向き直り、体勢を崩したまま、カットマンの二塁糸原に送球したが、2バウンドする弱々しい球筋になる。糸原が本塁に転送したが、三塁走者ガルシアだけでなく、無情にも二塁走者京田も本塁を駆け抜ける…。極めて珍しい「2ラン犠飛」を許してしまった。金本監督は敗戦後「技術の問題ですからね、そこはもう」と話すにとどめたが、俊介は猛省した。捕りにくい打球かと問われると、険しい顔で言った。

 「そうだったんですけど、その後にもうちょっと強く球を投げられていれば、2人目の走者をかえさずにすんだと思います。もっとしっかり、強い球を投げられるようにしないと」

 一瞬だけ失った冷静さが命取りになった。中村外野守備走塁コーチも「打球がナックルのようになって捕りにくかったのでは。あえて言えば、もう少し送球できればとは思う。焦ったのでしょう。やられました」と代弁した。勝ち越された2点が響き、形勢は中日に傾いた。中盤以降はワンサイドゲームになって完敗。7月は立て直すはずが6勝10敗。2カ月連続負け越しで停滞ムードが消えない。

 不安を抱えたまま、8月に入る。この日、主砲糸井が試合前練習のフリー打撃を行わなかった。金本監督も「ちょっと足の状態が悪いから。今日、明日くらいはちょっと」と説明した。6月30日ヤクルト戦で右足腓骨(ひこつ)を死球骨折。戦列復帰したが、完治しておらず、休日明けのこの日も欠場。今日1日もスタメンは厳しいとみられる。

 ベテラン福留もこの日は休養で出場せず、飛車角抜きで敗れ「ダブル危機」に陥った。今日1日の中日戦で敗れると単独最下位に転落し、自力優勝が消滅する可能性もある。金本阪神の3年目。今季最大の窮地に追い詰められた。【酒井俊作】

 ▼今日1日に広島○で阪神△または●、あるいは広島△で阪神●のとき、阪神は今季の自力優勝の可能性が消滅する。いずれの場合とも、阪神が2日以降の56試合に全勝しても、広島が阪神戦11試合以外に全勝すれば、勝率で阪神を上回るため。

 ▼阪神は今日1日の中日戦に敗れると、6月25日以来の単独最下位に転落する。