連敗が3で止まり、中日ナインをベンチで迎える小熊にようやく笑みが浮かんだ。8回3安打、毎回の自己最多1試合10三振で、チームをどん底から引っ張り上げた。

 「これがボクの全力の笑顔です」。少し引きつった笑みで、お立ち台でファンの声援に応えた。試合中は、ひたすらクールだった。初回先頭の荒波に四球を出す不安定な立ち上がりだったが、直後に武山が荒波の盗塁を阻止。続く好調ソトをカーブで空振り三振に切るとペースをつかんだ。2回にはDeNA主砲筒香をこの最速148キロの直球で空振り三振を奪うなど、6回までDeNA打線をゼロ封。7回に宮崎の二塁打で1点を失っても、続く倉本を三振に切り、主導権を渡さなかった。

 夏の甲子園に出場する母校近江の活躍が右腕を支える。「見ています。刺激をもらっている」。1回戦で強豪智弁和歌山を破り、2回戦は前橋育英をサヨナラで下した。前日14日に、後輩への差し入れを聞かれると「(ボクの)勝利を届けたいですね」。明日17日にベスト8をかけ常葉大菊川(静岡)と対戦する後輩たちに有言実行で白星を送った。

 8回終了後、完投は自ら辞退。球団史上7人目の毎回奪三振の完投は持ち越した。「試合を作って我慢してくれた。小熊がつないでくれた。明日は(松坂に)期待します」と森監督。レジェンドに再浮上へのバトンが渡った。【伊東大介】