神様の一撃で、甲子園が夢を見た。2点を追う9回1死一塁、阪神原口が代打コールされるとスタンドが沸き返った。その期待通り、連夜の対戦となった石山から中前打を放ち、一打同点、サヨナラへの好機を拡大した。「しっかり打てました。もちろん、なんとかしたい場面だったので」。

後続が凡打して笑顔はなかったが、完全に神様の領域だ。今季の代打成績は41打数20安打の打率4割8分8厘。与えられたチャンスで、極限まで集中力を高めて打席に向かう。この日は「タイミングが合わなかったので…」と打席を外す形で初球を見逃し。そこから全神経を研ぎ澄まし、一球入魂で快打につなげた。

球団記録も手の届くところにある。代打でのシーズン20安打は猛虎歴代3位で、2位の86年永尾泰憲まであと2本。そして08年に桧山進次郎が放った最多の23本にもあと3本だ。記録更新もモチベーションになりつつある。「また頑張ります」。敗戦の中、希望の星がきらめいた。【真柴健】