新井さんで王手! セ・リーグ王者の広島が、8回に一挙4点を奪う逆転勝ちで巨人に連勝。優勝のアドバンテージ1勝を含めて3勝0敗とし、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ突破に王手をかけた。雰囲気を一変させたのは新井貴浩内野手(41)。2死二塁から代打で同点適時二塁打を放ち、菊池涼介内野手(28)の決勝3ランにつなげた。今季限りで現役引退する大ベテランを旗頭に、2年ぶり日本シリーズへと歩を進める。

二塁上で、子どものようにはしゃぐ41歳がいた。新井は両手を突き上げ、何度もガッツポーズ。「自然と出た。冷静になると、ちょっと恥ずかしい。爆発しちゃったんで。しょうがない」と照れくさそうに振り返った。百戦錬磨の大ベテランが、我を忘れるほどの貴重な一打だった。

7回までチーム1安打。8回、2イニング目の畠からようやく反撃した。2死一塁で代走の上本が果敢に二盗。その直後、新井は内角低めのフォークをすくった。打球は左翼線ではずむ。同点だ。「スコアリングポジションにいったので、そこでまたグッと気持ちを高めた」。歓声が鳴りやまない。代走を送られ、ベンチで菊池の3ランにまた大興奮。思わず前のめりに菊池を抱きしめた。

シーズン82勝のうち41勝もあった逆転劇を、CSファイナルでも発揮。新井はリーグ3連覇の直前、驚きの声を上げていた。「全力でがむしゃらにやるのも大事なんだけど、ここという時に、みんながここだと思ってるから、力が集約されてガッと向かっていける」。まさにそんな一体感を具現化した試合だった。

リーグMVP受賞の2年前に比べて出番は減っているが、いたるところで後輩に助言を送ってきた。その一方で危機感を募らせる。「人に言うだけじゃなくて、自分が姿勢や行動で見せないといけない」。注目の舞台で手本を示すような一打。「ちょっとは力になれたのかな」と振り返った。

今季限りでユニホームを脱ぐ選手とは思えない。緒方監督も「難しい球だけどよく打ったね。チームの底力をこういう大舞台で出してくれた」と感嘆した。連勝で日本シリーズが目前。新井は菊池と並んだお立ち台で言った。「余計なことを考えず、とにかく明日の試合に“家族”一丸で頑張りたい」。広島ファミリーの長男が、先頭に立って34年ぶり日本一まで突き進む。【大池和幸】