大学NO・1外野手の看板に偽りはない。楽天ドラフト1位の辰己涼介外野手(22=立命大)が、初のシートノックで遠投125メートルを誇る強肩ぶりをいかんなく発揮した。力の入れ具合を抑えながらでも、低く強く、ブレのない送球は出色。キャンプインから連日攻守で能力の高さを見せつけ、平石監督をうならせた。

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シートノックの締めは前進守備からのバックホーム。中堅に入った辰己の返球はリリース時とほぼ変わらない高さを保って、ノーバウンドでキャッチャーミットに突き刺さった。「最後だけ少し力を入れました。5、6割です」と涼しい表情。「今日はコントロールと(いきなり全力で投げて)ケガをしないことだけ気を付けました」と話す通り、左右にぶれたり、カットマンの胸より浮く場面もほぼなく、実戦向きの強肩であることを印象づけた。

兵庫・社高校での3年間で身長が15センチほど伸びた。「体の出力が上がって、その使いこなし方が分かってきた頃には一気に肩が強くなっていました。特別に何か(トレーニング)をやっていたわけではないんですけど…」と首をひねる。高校時代にはマウンドから投げて148キロをマークしたことも。投手もやっていたが、進む道に迷いはなかった。「プロ野球選手になった時、野手やったら毎日テレビに出られる。投手だったら、中6日とかじゃないですか」。目立ちたがり屋の血が運命を決定づけた。

天性の才能を示すエピソードがある。野球を始めた時は両打ち。「打席って2つあるじゃないですか。だから、両方で打つものと思っていたんです。お父さんも全然、野球を知らない人だったので『どっちでも打っていいよ』って」と笑う。そして、あっけらかんと続ける。「どっちでも打ててたんで」。高校1年から左に専念したが、生まれ持ったセンスは抜群だった。

平石監督は「いいものを見せてもらった」とうなずきつつ「打球へのチャージの部分については、本人とも少し話そうと思う。あれくらいの肩なら、あえて走らせて刺すのも手だけど(そもそも)走らせないというのも必要になってくるから」。高いレベルの注文は、ルーキーへの大きな期待の裏返しにほかならない。【亀山泰宏】