レコーディングも終盤に差しかかった時、「私、この曲好き」と、歌っていた女子生徒がつぶやいた。演奏と合唱を担当したさいたま市立浦和高吹奏楽部の女子生徒のつぶやきに、50人の生徒が一斉にその生徒を見て、歓声を挙げる。演奏を繰り返し、そして歌い込んできたが、いよいよ完成が近づくにつれ気持ちが高まり、思わず漏れた言葉だった。

今回、全国高等学校女子硬式野球選抜大会(以下女子選抜大会=3月27日開幕)、ならびに全国女子硬式野球ユース大会(8月17日開幕)の応援ソング「It's a wonderful baseball!」【作曲・作詞補 丹生(にう)ナオミ、作詞 加須さくら】が完成した。2月17日、東京・港区のレコーディングスタジオSound Cityでレコーディングが行われた。3月27日の女子硬式野球選抜大会の会場「加須きずなスタジアム」での開会式でお披露目される。

公式応援ソングの制作に情熱を込めてきた全国高等学校女子硬式野球連盟の浜本光治(みつはる)代表理事(63)は、レコーディングで、合唱の録音取りがはじまると顔を上気させて聞きほれた。「どうですか浜本さん、思いを込めて作り上げた応援ソングは?」。そうスタッフに声をかけられると、優しそうな表情をより一層ほころばせて「いいですね、本当に素晴らしいです」と、上ずった声で何度もうなずいた。

女子高生の硬式野球大会は、メジャー大会として毎年3大会が開催されている。春の選抜大会と、8月開催のユース大会は、埼玉・加須市で開催されており、女子の選抜大会は今年で第20回記念、女子ユース大会も同第10回記念を数える。夏の全国高等学校女子硬式野球選手権大会(毎年7月末、兵庫県丹波市のつかさグループいちじま球場で開幕)も今年で第23回と、女子高生の硬式野球は確実に歴史を重ねてきた。

その中で、昨年3月「加須きずなスタジアム」の完成に伴い、女子硬式野球をより多くの人に知ってもらうために、今回の応援ソング「It's a wonderful baseball!」の誕生の運びとなった。作曲した丹生氏はさいたま市立浦和高吹奏楽部のOG。「今回お話をいただいて、すぐに書かせて下さいと返事をしました。練習環境も厳しい中で、浜本さんたち熱意ある人の取り組みに感銘を受けました。女子野球のスピード感と、平和をテーマに、試合が始まる時と終わった後の気持ちにストーリーを込めました」。

吹奏楽部の顧問で、レコーディングでは指揮者を務めた小泉信介教諭(45)は「こんな素晴らしいスタジオでレコーディングをできることは、生徒にとって大切な経験になりました。みんな、練習の成果を出してくれたと思います」と、大役を終えてほっとした表情を見せていた。同校の吹奏楽部は4月29日には第44回の定期演奏会を控えており、練習に忙しい中で、応援ソングを完成させる大仕事をやり抜いた。

これから春の選抜大会がはじまる。最速123キロの投手や、フェンス直撃(両翼91、中堅115メートル)の長打を放つ打者など、これが女子高校生かと驚く場面が随所に見られる。応援ソング「It's a wonderful baseball!」とともに、女子高生による硬式野球の魅力が広くファンの目に届くことが期待される。

なお、詳しい情報は全国高等学校女子硬式野球連盟、もしくは全日本女子野球連盟のホームページに掲載中。