“大王”の心が、ようやく晴れた。台湾・ラミゴから今季新加入の日本ハム王柏融外野手(25)が、追加点となる来日初打点で初のお立ち台をゲットした。

3月31日オリックス戦(札幌ドーム)の2-1で迎えた5回2死一、三塁。フルカウントから、榊原のスライダーを左前へ運んだ。チームは4年ぶりの開幕カード勝ち越しで、07年以来、12年ぶりの負けなし発進。ロケットスタートで、上昇気流に乗った。

   ◇   ◇   ◇

緊張も、迷いも、心を縛っていたものが、いつの間にか消えていた。2-1の5回2死一、三塁。1点を争う投手戦でまわってきた追加点のチャンスだ。王柏融は「打席に入る前に、絶対に走者をかえしてやるという気持ちで、打席に入った」。意気込みとは裏腹に、心は実に冷静だった。

2球で追い込まれてから、粘った。ボール球を見極め、際どい球はファウルで逃げる。フルカウントに持ち込み8球目、外寄りのスライダーをすくい上げた。記念すべき来日初打点は、左前へのポテンヒット。「記念のボールは取っておきます」。苦しんだぶん、喜びは格別だった。

先頭の4回にも右前打を放っており、この日2安打。前日30日に8打席目で待望の来日初安打が生まれ、つき物が取れたのか。「今まで打席に入る時は硬くなる傾向にあったけど、今日はリラックスできて球がよく見えた」と上昇の手応えをつかんだ1日となった。

開幕が近づくにつれ、それまで絶好調だった打撃成績がみるみると下がっていた。「早く結果を残したいという気持ちが見えていた。国を背負っているから」と栗山監督。故郷台湾のファンやメディアに結果で応えたかったが、気持ちばかりが空回り。金子打撃チーフ兼作戦コーチは「札幌ドームで打ちたいと、よく口にしていた。良くない傾向だと思った」。性格は内気。打てない日は「Everyday、Newday」という同コーチの励ましに、救われた。

試合後のヒーローインタビュー。4万人超で埋まったスタンドを見渡し、惜しみない歓声に「すごく、いい景色」と感激した。「次も勝ち越すので、応援よろしくお願いします。謝謝(シェイシェイ=ありがとう)」。台湾で2度の打率4割に、3冠王、シーズン200安打…。“大王”と呼ばれる男の、本領発揮の日は近い。【中島宙恵】