東洋大が完全優勝で令和初代チャンピオンに輝いた。同点の延長11回1死一、三塁、小川翔平遊撃手(3年=霞ケ浦)がサヨナラ犠飛を放った。第1試合で国学院大が負けた時点で優勝は決まっていたが、亜大に連勝。勝ち点5とし、2季ぶり20回目の優勝に花を添えた。原動力は村上頌樹(しょうき)投手(3年=智弁学園)。昨年は登板機会が限られたが、エースとなった今春、6勝0敗、防御率0・77の大活躍で引っ張った。6月10日からの全日本大学選手権(神宮、東京ドーム)で日本一を目指す。駒大は立正大に連敗し、勝ち点0の最下位。2部首位との入れ替え戦に臨む。

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小川の打球が中堅方向へ上がった瞬間、村上は「勝った!」と確信した。6-6の延長11回1死一、三塁。亜大・後藤拓が後ろに下がるのがベンチから見えた。前日の1回戦で132球完封。応援に徹していた。仲間とともに前のめりになった。捕球後、三塁走者の山田が駆けだすと、真っ先に本塁へ出迎えに行った。「素直にうれしいです。チーム全員で力を合わせた結果の優勝だと思います」。スタンドに向かって、両手でVサインした。

16年センバツ優勝投手は1年春から神宮デビューを果たし、完封勝利も挙げた。しかし上茶谷、甲斐野、梅津の150キロトリオがそろう昨年は登板6試合だけ。3人ともドラフト上位でプロ入りした逸材だが「悔しかったです」と正直に打ち明ける。

もともと、制球の良さは折り紙付き。杉本泰彦監督(59)が「僕が現役捕手だったら(上茶谷ら)3人よりも村上と組みたい」と公言するほど、狙ったところにボールが来る。あとは球威を上げるだけだった。転機は今春の開幕前。「フォームを見直そう」とセットで立った時、軸の右足に体重を乗せることを意識。投球の“間”を見つめたことで、球に力が乗った。1年時は130キロ台が多かったが、コンスタントに140キロ台後半に。前日には最速を1キロ更新する149キロをたたき出した。一気にエースの座を射止めた。

1月の練習はじめ。杉本監督は選手全員に色紙を渡し、今年の目標を書かせた。村上は迷うことなく「年間10勝以上&タイトルをとる」と記した。今春6勝で、既に半分以上をクリアした。タイトルも確実だ。新たに目標を加えるなら? 「ないです。いや、日本一ですね」。昨年の全日本大学選手権は初戦コールド負け。村上は登板機会すらなかった。戦国東都の代表として、全国に名をとどろかせる。【古川真弥】

◆村上頌樹(むらかみ・しょうき)1998年(平10)6月25日、兵庫県生まれ。小1から投手として軟式野球を始め、南淡中では硬式のアイランドホークス所属。3年時にジャイアンツ杯出場。智弁学園では1年夏から背番号11で甲子園出場。3年春、16年センバツ優勝投手。東洋大では、昨秋までは通算3勝。174センチ、75キロ。右投げ左打ち

<東洋大の強さ>

東洋大の防御率は、昨秋よりも悪かった。2・30。上茶谷(現DeNA)ら150キロトリオを擁した昨秋が1・59だ。もっとも1試合(9イニング)平均の失点でみると、昨秋が2・35で、今季が2・30。今季の方が0・05少なかった。

今季は自責にならない失策絡みの失点が0だった。昨秋は10点もあった。失点=自責点は、6校中で東洋大だけ。150キロトリオの抜けた投手陣を、バックが堅い守りで支えた。

失策は5。昨秋の12を大きく減らした。その要因を佐藤都志也主将(4年=聖光学院)がこう説明した。「(杉本)監督からムダな失点を減らせ、といわれています。村上の制球、テンポがいいんで、守りやすかったんじゃないですか」。

村上は9試合(70イニング)を投げ、与四死球15。1試合平均1・93。余計な走者を出さず、登板時の失策はわずか1だった。【米谷輝昭】