左肩痛を克服したソフトバンク和田毅投手(38)が帰ってきた。「日本生命セ・パ交流戦」の中日戦(ヤフオクドーム)で、2年ぶりの1軍マウンド。先発し5回78球で2失点。同点で降板し633日ぶりの白星はつかなかったが、4発で5点と打線が奮起しチームは中日に連勝した。

長いリハビリの先に見つけた新しい投球スタイルで、ここからチームを支えていく。

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まだ青空が残る夕暮れ、海から流れてくる風の中、まっさらなマウンドで和田は左手を静かに投手プレートに置いた。この日のヤフオクドームは今季初のルーフオープンデーだった。「うれしかった。この場所に戻れて」。ピンチになると一塁から内川、三塁から松田宣が声をかけにきてくれた。「気持ちのスイッチをうまく入れてもらえた。感謝というか、やっぱり1軍はいいなと。初めての感情だった。ここに戻ってくるためにリハビリしていたんだと」。頼れる仲間、1球1球への大歓声。すべてが和田の力となった。

同点の5回2死一、三塁のピンチでは、この日同点本塁打を含む2打数2安打のビシエド相手に2球とも内角へ直球で攻め込み左飛。「ビシエドを抑えることに全力でいった」。ピンチをしのぎ、この回で降板。5回78球、7安打を許しながらも2失点と粘った。

「昔みたいに空振りが取れない中、カットボールやツーシームを使いながらという新しいスタイルが今日はできた部分もあった」。2回までは投手プレートの一塁側から投げていたが3回からは三塁側へ。「力みもすごかったし、(甲斐)拓也も三塁側の方がツーシームを使えると言っていた。試合中に球がいかないからと変えたのはあまりない」と、迷わず変えた。

昨年の春季キャンプで左肩に異変を感じた。左肘は何度も手術を行ったが、肩を痛めたことはほぼなかった。同5月には2軍で2試合投げたが再び悪化。その後はブルペンにも入れなかった。年俸4億円から3億円ダウンの1億円で1年契約。「ケガをするというのはやはり年を取っているということ。投げる体力や感覚は試合でしかつかない」。開幕に間に合わなかったが、焦って悪化させた前年の反省を胸に焦らず6月に帰ってきた。工藤監督も「彼に取って大きな一歩。次を楽しみにしたい」と次回登板を示唆。バンデンハークとともに、また頼もしいベテランが戻ってきた。【石橋隆雄】