初登板で輝いた。日本ハムのドラフト1位吉田輝星投手(18)が「日本生命セ・パ交流戦」の広島2回戦(札幌ドーム)でプロ初登板初先発し、5回4安打1失点で初白星を挙げた。昨夏の甲子園で金足農(秋田)のエースとして準優勝した右腕は、セ・リーグ3連覇中で今季も首位の強力打線相手に、最速147キロの直球を軸に押す投球。大舞台での強さを発揮し、21世紀生まれで初の勝利投手となった。新人の好投でチームは交流戦首位に立った。

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3万人を超える観衆を前に、夢に見た景色が広がった。ヒーローインタビューでウイニングボールを持った吉田輝が、スタンドの両親へ感謝を伝えた。「両親にプレゼントしたい。ここまで来られたのも両親のおかげ。やっと1軍の舞台に立てたので、これからもしっかり返せるように」。初勝利は最高の恩返しだ。

昨夏甲子園のような真っ向勝負で、ファンを魅了した。1回いきなりのピンチにも動じない。1死満塁で西川を外角高めの140キロ直球で3球三振、続く磯村には2球連続で帽子を飛ばす力投を見せ、最速の147キロをマークするなど三ゴロに打ち取った。2回表に長野に適時二塁打許すも、その裏味方の援護を受け一気にギアを上げた。「自分の真っすぐは、ある程度通用したのかなと思います」。初体験の5回も、直球主体で3者凡退。「5回を投げきったことがなかったので、どうせなら本番でやりたいと思っていた。勝利投手というよりもそっちの気持ちの方が強かった」と笑みを見せた。

努力の蓄積が実を結んだ。強みは基礎体力。原点は中学時代から徹底してきた走り込みだ。中学2年の春から約2年間指導した当時の監督石川英樹さん(56)は驚かされた。練習の合間、体にくくりつけたタイヤを引いてポール間を走り込んでいた。「常に下半身をいじめていました。やれと言った子は今までも何人もいたけれども、これ以上はやめた方がいいよと言った子は吉田が初めて。こっちが心配になるくらいでした」と舌を巻いた。

プロ入り後も姿勢は変わらない。2月の沖縄・国頭キャンプでも時間を見つけては走り込んだ。首脳陣やトレーナーはオーバーワークを恐れたが、心配を覆す体力に加藤2軍投手コーチは「体力があるから」と止めなかった。

試合前、心強いエールを受けていた。昨夏甲子園準優勝の金足農メンバーのグループLINEに「頑張れよ、負けるな」など応援メッセージが次々に寄せられた。短く「おう」と応えた。プロ最長の5回を投げ84球4安打4三振1失点と堂々たる投げっぷり。「1軍で活躍するのがプロ野球選手。ここがスタートラインだと、もう1回気を引き締めてどんどん先に行きたい」。大舞台で力を発揮する度胸と力を増した直球で道を切り開く。【山崎純一】