巨人山口俊投手(31)が“どすこい記念日”に投手3部門のトップに立った。ヤクルト10回戦(秋田)に先発し、7回3安打無失点でリーグ最多タイの8勝目(2敗)。防御率1・99、勝率8割といずれもリーグトップに躍り出た。ローカルキラーぶりも健在で巨人移籍後の地方球場は通算6戦で5勝1敗。高卒新人としてデビューした13年前と同じ「6月29日」にプロ通算1000投球回もクリア。チームを再開初戦の白星に導き、広島とのゲーム差を2・5に広げた。

  ◇    ◇    ◇

山口がセ界を最上段から見下ろした。雨雲が抜けた秋田のマウンドを涼しい顔で支配した。7回を3安打無失点で危なげなく、自身4連勝で今季8勝目を積み上げた。昨夏甲子園で金足農が準優勝し「カナノウ旋風」の出発地になった同地で仁王立ちの快投。「イメージとしては力まずに打ち取っていこうと。リーグがまた始まって初戦なので、絶対に勝ちたいと思っていた。うまくはまって良かった」と大きくうなずいた。

若人を技と力で封じ込めた。2点リードの6回2死一塁。ヤクルト村上を打席に迎え入れた。カウント2-2から内寄りへのフォークは捉えられたかに見えたが、右翼フェンス手前で打ち取った。左翼から右翼方向への打者有利の風も痛手には至らず。続く7回先頭の中山には直球を続けて追い込むと、最後は内角スライダーでコーナーを突いて見逃し三振。「こういうマウンドはフォークが投げづらい。三振よりも前に打たせようと思っていた」と余裕たっぷりでプロ通算1000投球回をクリアした。

自然体でチームの柱を担う。今季から投球時の肘を若干下げた。スリークオーター気味にも見えるが「無理に上げようとか、下げようとかという意識はない。一番、投げやすいところで投げている」。固定観念を取り払い、能力を最大限に生かすフォームにたどり着いた。幼少期、青春時代ともに腹いっぱいのご飯が成長の原動力だった。プロ入り後も、数年前まで移動ゲーム時の新幹線車内で焼き肉弁当2つをペロリと平らげた。

13年ぶりの“どすこい記念日”を華々しく飾った。横浜(現DeNA)時代の06年6月29日、高卒ルーキーとして巨人戦でプロ初登板、初先発し、初勝利をマーク。「初勝利は巨人戦で、今日はジャイアンツのユニホームで1000イニングの節目になって良かった。体はまだまだ元気。1つ2つ、山を越えられるように頑張ります」と、さらなる高みを見据えた。山口が、風格、風貌ともに申し分ない存在感を漂わせる。【為田聡史】

▽巨人原監督(山口について)「ここのところ、いいですね。この状態を続けてほしい。(地方球場のマウンドにも)それぐらいの順応力はあるでしょう」

▽巨人宮本投手総合コーチ(地方球場に強い山口に)「臨機応変に対応できる。(マウンドが)掘れて大変だと思うけど、自分の投球ができるのはさすが。信頼は日に日に高まりますね」

▼山口がハーラートップに並ぶ8勝目。これで6月の山口は4勝0敗、38奪三振、防御率0・77となり、6月は勝利、勝率、奪三振、防御率の4部門がリーグトップ。試合の少ない3、10月を除き、このままセ・リーグで月間4冠ならば12年6月の前田健(広島)以来だ。今季の山口は4月4勝→5月0勝→6月4勝。山口が0勝だった5月の巨人は負け越しで、4勝した4、6月は勝率6割超えと、チームの成績は山口にかかっている。また、山口は7回に中山を三振に仕留め、プロ野球353人目の通算1000投球回を達成。初投球回は横浜時代の06年6月29日の巨人9回戦(横浜)。