原巨人が、今季2度目のサヨナラ勝ちで、3連覇中の2位広島に5ゲーム差をつけて独走態勢に入った。

3度リードを許したがすべて直後に逆転。同点の9回は若林の二盗から相手失策を誘い、サヨナラ劇につなげた。原辰徳監督(60)は、先発桜井を3回であきらめて積極的な継投を展開。7回には代打阿部が同点適時打を放つなど、打ち手が決まった。リーグ戦再開から4連勝を飾り、貯金を今季最多の12に伸ばした。

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顔を紅潮させて会見場に現れた原監督は、テレビ取材を終えると、ふーっと大きく息をつき「ちょっと座らせてもらっていいかな」と切り出した。今季73試合目、勝ちゲームで初めてイスを求め言葉をつないだ。

「かなり物語は長いですね。今日は何て言うか…一発横っ面ひっぱたかれないとなかなか点数が入らないようなね。先行というか、仕掛ける部分ではあまりうまくいきませんでしたが、しかし攻撃性というのは良かったと思いますね」

リードされた直後に逆転を3度繰り返し、同点で迎えた9回。ベンチで腕を組みながら体を左右に揺らし、頭をめぐらせた。先頭の若林が四球を選んで出塁。初球、増田大が犠打の構えからバットを引いた間に、グリーンライトのサインを出した。若林が二盗。「あの場面で初球からというのは、技術だけではない強さがある」。無死二塁と戦局を動かし、フルカウントから増田大の三塁線への犠打が相手の失策を誘った。若林が一気に生還し、サヨナラ勝ちを呼び込んだ。

歓喜に沸く東京ドームで両手を掲げた指揮官。序盤から積極策を貫き、試合を動かした。先発桜井が3回までに3失点すると、攻めの継投に転じた。2回無死一、三塁で追加点を奪えず、3回は無死満塁から1死となり、桜井に打順が回った局面。代打に中島を送った。「1点取ったら桜井をいかせようと思った。しかし点が入らなければ攻撃に転ずると。桜井にも言っておきました」。

3回に追加点は奪えなかったが、7回は代打阿部が同点打を放つなど勝負手が決まった。投手、野手含め総勢21人を操り、9回の時点でベンチに残った野手は立岡1人。大城は一塁→捕手→一塁と大胆に守備変更し、勝機を探し求めた。

大城を下げればベンチに捕手はいなくなる。「キムタクがいればね。拓也聞いてるか!」と天井を見上げて、ほほ笑んだ。09年、本職が内野手の木村拓也を捕手で起用した采配-。37歳で急逝した後輩を思い起こし、会見を締めくくった。【前田祐輔】