ここぞで頼りになる男が、存在感を示した。巨人阿部慎之助捕手(40)が打線をけん引し、今季初の7連勝に貢献した。岡本和真内野手(23)がコンディション不良でスタメンを外れる中、6月6日楽天戦以来となる4番での出場で1安打1打点と活躍した。チームは貯金を今季最多の15とし、セ・リーグの貯金独り占め状態を継続。2位阪神との差は7・5とした。

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求められた役割を結果で体現した。5回1死一、三塁、阿部は外角の直球を片手で合わせ、右翼にライナー性の打球をはじき返した。2、3番の連打で作った好機に、巧みなバットコントロールを駆使した軽打で適時打を放った。「点が入ったから、良かった」。短い言葉に、ベテランの矜持(きょうじ)がにじんだ。

試合は阿部のバットから動いた。1回1死一、三塁、スライダーにタイミングを外されたが、打球に強烈なスピンがかかって、三塁前へ。前進する宮崎のグラブからボールがこぼれ、適時失策で先制点を奪った。4回無死二塁には、一ゴロの進塁打でビヤヌエバの適時打を演出。ことごとく得点に絡んだ。

岡本への手本を示した。ベンチスタートの岡本について原監督は「たまには先輩たちの姿を見るのも、今日に関してはいいだろうというところ」と胸中を明かしたが、指揮官の思惑通りだった。今季は、こんなこともあった。4月17日の広島戦。制球に苦しむルーキー高橋のもとに、一塁から岡本が小走りで駆け寄った。実はその直前、阿部が岡本にそっと声を掛けた。「マウンドに行って、声を掛けてやれよ」。内野は主将の坂本勇ら先輩野手で占められていた。投手への声掛けに遠慮がちだった岡本の呪縛を解くひと言。阿部の存在はさまざまな場面で効いている。

原監督は「ありがたいですね。存在というのはいるだけでも存在かもしれませんが、そこで仕事をやり遂げる。役割を全うし、期待通り、あるいは期待以上の働きをしてくれているのは見事だと思います」と賛辞の言葉を並べた。チームは今季初の7連勝で2位阪神との差は7・5。頼りになるベテランの力が巨人の強さを物語っている。【久保賢吾】