区切りの1発を、史上初のサヨナラ弾で決めた! 西武中村剛也内野手(35)がオリックス13回戦(メットライフドーム)で、史上20人目となる通算400号本塁打を達成した。同点で迎えた延長11回、オリックス増井から今季15号を左翼スタンドに豪快に運んだ。プロ18年目、西武の生え抜き選手では初めての快挙となった。今は亡き先輩の声に刺激され、歩んできたホームランロード。希代の長距離砲は、これからも前へ進み続ける。

  ◇   ◇   ◇

中村らしい、滞空時間が長く、大きな放物線だった。サヨナラ弾での400号。左翼スタンドに飛び込む前に確信した。右手でバットを天にかざす。カウント2-1から高めのフォークを仕留めた。メモリアルの祝福とサヨナラの歓喜で、ウオーターシャワーを浴び、ずぶぬれになりながら「ハッキリ言うとなんも考えてなかったです。久しぶりに芯に当たったんで入るかなと思いました。(400号は)もっとあっという間にしたかった。時間がかかったけど、打ててよかった」と、喜びをかみしめた。

プロ18年目。今もあの声を胸に刻み打席に立っている。「稼げよ。プロなんだから」。プロ4年目の05年。所沢の焼き肉店で17年6月28日に急逝した森慎二氏から言われた。「僕はまだ年俸700万くらい。慎二さんはバリバリで1億を超えていた。金髪ロン毛。でもそういうのじゃなくて、とにかく格好良かった」。耳に届き胸に響いた。「プロの世界っていうのは、そういうものなんだって教えてもらいました。そういうこと言う人はあまりいないから」。打つことで自分の価値を証明。大型契約を何度も勝ち取ってきた。

実力が人気を呼び、愛嬌(あいきょう)が人気に拍車を掛けた。座右の銘を「おかわり」といいブレーク。体重100キロを超える大きな体から、滞空時間の長いアーチを繰り出す。「ホームランは狙って打つもの。その打ち損じがヒット」。1試合2本塁打のおかわり弾は39回。本塁打王6度はパ・リーグ最多を誇る。

不変もあれば、変化もしてきた。バットを構えるとき、右手はそえて軽く握るだけ。打席では肘当てもレガースもつけない。「若いときはつけろってすごい言われたけどね。肘当ては少しつけたけど、打つのに邪魔なんで。(死球を)よけるのは得意ですから」と大きな体をそらせながら、変わらぬポリシーを言い切る。背番号60も「丸いのが好きだから」とルーキーから変わらない。

一方で昨季序盤、不振に陥るとバットをキャンプ時の950グラムから890グラムに軽くした。「去年、打球をとらえたと思っても伸びなかった。それで少し軽くして、バットが間に合うようになってきた」。35歳を迎え打ち続けるためだった。

思い出に残る1発を聞かれ、首を振って言った。「思い出に残るホームランなんてない。そんなの考える必要もない。考える方が不思議。そういうことは現役が終わってから勝手に思い浮かぶもの。まだ現役。まだまだ打てると思う。(ホームランは)野球の醍醐味(だいごみ)。もっともっと努力して頑張っていきたい」と満腹感はない。本塁打を打つことで生かされてきた野球人生。またすぐに、やみつきになった大好物のホームランをおかわりする。【栗田成芳】