いぶし銀が強烈な輝きを放った。巨人炭谷銀仁朗捕手(32)が自己最多タイの6打点と暴れた。3回に中押しの4号2ラン、6回には5号満塁弾でとどめを刺した。

グランドスラム、1試合6打点は、ともに新人イヤーの06年3月29日ソフトバンク戦以来。湿りがちだった打線もスカッと16安打16得点の猛打で連敗を4で止めた。梅雨明けを告げる快勝は原辰徳監督(61)の通算999勝目となり、大台に王手をかけた。

  ◇    ◇    ◇

下半身からの力が乗り移った。太もも周り63センチの炭谷が、坂本勇から拝借したツートンカラーのバットをブン回した。5点リードの3回無死一塁。阪神岩田の甘く入ったシュートを一振りで捉えた。「早めに追加点を、と思っていた。チームの流れもあるし、何点あっても気を緩めないように」と相手先発を一撃で沈めた。8点リードの6回2死満塁でも、阪神浜地の146キロ直球を左中間席に運び勝利を決定づけた。

06年のプロ1号以来となる満塁弾で1試合6打点も当時以来だ。お立ち台に招かれ「もう忘れました。今日はできすぎ。帰り道で事故をしないように気をつけて帰ります」と本音とジョークを織り交ぜた。4連敗中でベンチ前3カ所に盛り塩をしていただけに「どんな形でも勝つことだけを考えていた」と1戦必勝にこだわった。

繊細さと大胆さを兼ね備える。先発桜井を「チェンジアップとカットボールがいつもほどじゃなかった」と察すると、序盤はカーブを多投させた。コーナーを丁寧に突く配球で若手右腕を好リードした。一方で前カードのヤクルト3連戦中では遠征先の大阪市内の美容室を早朝8時から貸し切って散髪した。「もやもやしてたし、何かを変えたかった。無理を言って、朝早くから開けてくれたことに感謝しています」と頭をスッキリさせた。

監督通算999勝を積み上げた原監督も打棒に敬服した。中押し、ダメ押しの2発に「もう、すごいです。ゲームを支配していくことが大事」と8番打者の攻守の働きを評価。1000勝の大台に王手をかけ「(意識は)全くないですね。明日のジャイアンツの1勝が一番いいですね」としたが、炭谷は「足踏みせず、すぐに決めたい」。2位DeNAとのゲーム差を4・5に広げた1勝を、間髪入れずにメモリアル勝利へとつなげる。【為田聡史】