広島安部友裕内野手(30)が、チームを2位浮上に導く劇的代打弾を放った。同点の8回に代打で出場し、ヤクルト・ハフから7号勝ち越しソロ。メヒアや三好の台頭もあり、スタメンの機会を減らす中堅が存在感を示す1発でチームは連勝。首位巨人とのゲーム差6・5を維持した。

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午後9時10分。マツダスタジアムのボルテージが最高潮に達した歓声を一身に浴びた安部がダイヤモンドを1周した。代打で迎えたこの日の初打席。初球だった。ヤクルト・ハフのカットボールをフルスイング。捉えた打球は右中間席に吸い込まれた。キャリアハイのシーズン7号は値千金の勝ち越し弾。チームを勝利に導いた。

両先発が5回をもたず降板するなど、試合展開が遅かった。ベンチで出番を待ち続けた安部は、与えられた打席で全神経を集中させた。「代打の鉄則である、初球からいく。そのつもりでした」。覇気を前面に出した攻めの打撃が最高の結果をもたらした。

大きな仕事を成し遂げる8時間40分前、安部は1人、マツダスタジアムのグラウンドにいた。高温の影響で早出特打から練習が室内練習場で行われる中、安部は午後0時30分から約30分、打撃投手をトス役にロングティーでバットを振り続けた。「雨が降っていれば室内でやりますが、雨が降っていなかったので。ルーティンなので」。不振やコンディションの影響で出場機会が減っているが、体全体をしっかり使った練習法で打撃を確認。毎日のように午前11時ごろに球場入りし、いち早く汗をかいてきた成果が表れた。

広島は2試合続けて僅差の試合をものにして、9日以来の連勝。4カードぶりの勝ち越しとなった。敗れたDeNAを抜き、2位に浮上。首位巨人とのゲーム差6・5をキープした。緒方監督は「最後はザキ(中崎)が本当にギリギリのところで粘ってくれた。最後はマツダの力でしょう。今日も誠也があそこで2ランを打ってくれて、打線も“いける”という感じになった。安部もよく打ってくれた」とナインをたたえた。レギュラー再奪取を狙う安部とともに、広島の戦いもまだ終わっていない。【前原淳】

▽広島東出打撃コーチ(左腕ハフに左の安部を代打に)「ハフは昨日(20日)も左打者に投げづらそうにしていたから」