阪神福留孝介外野手(42)が、特別な思いも込めてアーチを懸けた。中日戦の3回に木浪、近本の新人コンビの連打で1点を先制後、9号3ランで続いて快勝を引き寄せた。試合前にメッセンジャーの引退を知ったベテランは「若い選手が学ぶべき姿勢」と敬意を表した。クライマックスシリーズ(CS)進出を争う3位広島と再び3・5ゲーム差とし、残り11試合。福留も諦めない姿勢で戦い抜く。

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セ・リーグ最年長の福留が戦友へ惜別の9号3ランを放った。1点を先制してなおも3回1死二、三塁。中日柳の3球目、内角141キロ直球をけれん味なく振り抜いた。右翼ポール際に伸びた打球は、切れることなくスタンドイン。「追加点を取れたということはいいこと。いい形で打てた」。大ベテランが貫禄の1発で勝利を大きく引き寄せた。

特別な日だった。13年阪神入団以来のチームメートであるメッセンジャーがこの日の午前中に現役引退を決断。その知らせはすぐに福留の耳にも入った。「これは本人が決めたこと。精いっぱいやった結果。お疲れさまとしか言えない。ただ、俺よりも年下なわけだし、もうちょっと出来たんじゃないかと…」。複雑な思いで決断を受け止めた。

福留は誇り高きエースへの敬意を忘れなかった。「うちの若い選手も学んでいくべき姿勢だった。若い選手が引き継いでいければいいんじゃないかな」。熱いハートに、野球に対する真摯(しんし)な姿勢。異国の地でキャリアを積み上げた共通点もあり、年齢やポジションの違いはあれど、互いにリスペクトしてきた。

今年の5月4日DeNA戦(甲子園)では、2人そろってホームのお立ち台に登壇。メッセンジャーが今季から日本人扱いになった記念の「I’m Finally 日本人」Tシャツをそろって着用。右腕の2年ぶり完投勝利を喜んだ。

首位巨人に敗れた3位広島とは再び、3・5ゲーム差になった。矢野監督も「いやぁ、一番流れが一気にこっちに来る打撃になった」と、序盤のベテランの働きを激賞した。まだ諦めるわけにはいかない。タテジマに別れを告げるメッセンジャーの思いも背負って42歳福留は戦う。【桝井聡】

▽阪神浜中打撃コーチ(福留の3ランに)「いつもナゴヤドームで柳の時は苦しい、ゼロ、ゼロの状況だった。今日は3回のところで点が取れて、ぱっと1発が出た。うちにはなかなか無いパターンで、そこで打ってくれるというのは大きな一打だったし、さすがだなと思います」