大きな背中が少し小さくなった。小さな背中が少し大きくなった。

巨人阿部慎之助捕手(40)と坂本勇人内野手(30)。10歳差の新旧キャプテンが語り合った。阿部は任期8年でリーグ3連覇を2度達成。15年から重いバトンを託された坂本勇は、4年連続のV逸にもがき、ようやくキャプテンとして初優勝にたどり着いた。   ◇   ◇   ◇

開幕前夜に続き、2人で食事するのは今年2度目だった。取材を兼ねていたとはいえ、膝を突き合わせた新旧キャプテンが醸し出す空気感には重厚感があった。

武将の話題になった。阿部は「待つのは無理だな。俺は殺しちゃうかもね」。坂本勇も「僕も殺すかな。鳴かないんでしょ。待つはないな。お前は、もうええわってなると思う」。ともに織田信長を推した。素早い行動力、創造力、結果重視。常勝を義務づけられた球団で脈々と受け継がれる伝統を感じた。

一方で坂本勇は「生え抜き」に嫌悪感を示した。「自分たちが『生え抜き』として話をするのは、FAやトレードできた選手に失礼なこと。みんな勝つためにやっている」と言った。阿部も新外国人やFA加入の選手と積極的にコミュニケーションをとってきた。閉鎖的な組織に発展はない。厳しさと同じ量の懐が、2人には当たり前のように備わっている。【為田聡史】