闘魂投球が甲子園に帰ってくる。「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が17日に行われ、最速154キロ右腕の創志学園・西純矢投手(3年)が阪神から1位指名を受けた。

憧れの投手であり、遠戚である西勇輝が在籍する球団で、昨夏沸かせた聖地を本拠地とする。亡き父と約束したプロとしての道は、縦じまのユニホームに袖を通して歩むことになった。

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運命の糸で結ばれていたのかもしれない。西は自分の名前が呼ばれると、モニターを見つめていた穏やかな表情をまた少し緩めた。「甲子園は自分にとって特別な場所。またあそこで野球ができるのは、ワクワクします。プレッシャーは一切なくて、熱狂的なファンの方を喜ばせられるピッチングをできたらいいなと」。早くも縦じま姿で躍動する自分を思い描いていた。

縁を感じている。佐々木、奥川、及川とともに「高校四天王」と呼ばれた。昨夏沸かせ、自身も投手として育ててくれた聖地が本拠地となる。「甲子園では昨年負けたまま終わっているので、阪神タイガースに入団してから借りを返せるような投球ができればと思います」。プロとして聖地に帰ってくる。

虎エース西勇輝は遠戚にあたる。曽祖父からつながりがあることを曽祖父の葬儀で知った。親戚と写真に納まる当時オリックスの西勇輝がまぶしかった。親戚というだけでなく、投手としても憧れ。投球映像を見て研究もした。「コントロールがいいですし、技術的なことを聞けたら」と、早くも弟子入りを希望した。

父・雅和さんもきっと喜んでいるだろう。17年秋の公式戦観戦後の帰宅時に倒れ、4日後の10月11日に45歳の若さで他界した。それでも西は忌引明けに登校し、部活に出た。「周りの方々に成長させてもらった」と本人は言うが、「自分がプロ野球選手になってお母さんを楽にさせてあげたら」と姿勢が変わった。夏の大会前には練習場から約35キロの起伏ある距離を自主的に週に1度は走って帰るようになった。長沢野球部監督は「親の死を乗り越えた。本当は弱いと思うが、鼓舞していたと思う」と目を細めた。

天国の父に向けた意味もあったマウンドでの雄たけびは控えるようにした。昨秋からはメンタルトレーナーに師事。それでも、持ち味である強気な投球スタイルは貫いている。「タイガースファンの方は熱狂的な印象を持っている。自分の熱い投球をみていただければ」。虎党に負けぬ熱い男が、聖地を沸かす瞬間を思い描きながらプロの扉を開く。【前原淳】

◆西純矢(にし・じゅんや)

生まれ 2001年(平13)9月13日、広島県生まれ。

球歴 小2から鈴が峰レッズで軟式野球を始め、阿品台中ではヤング広島に所属。中2夏に全国優勝。3年時に日本代表「NOMOジャパン」に選出。創志学園では1年春からベンチ入り。2年春からエース。2年夏の甲子園に出場。3年夏は岡山大会準決勝で倉敷商に2失点完投も敗戦。

侍ジャパン 8~9月のU18W杯で4試合に登板。パナマ戦では先発して6回1失点で勝ち投手。打っても12打数6安打の打率5割、9打点。2本塁打で本塁打王と大活躍した。

サイズ 184センチ、88キロ。右投げ右打ち。