慶大(東京6大学)が19年ぶりの日本一へ王手をかけた。中村健人外野手(4年=中京大中京)の先頭打者アーチを皮切りに7安打6得点。5投手が1失点でつなぎ、城西国際大(関東5連盟第1)に快勝した。関大(関西5連盟第1)はタイブレークの末、東海大(関東5連盟第2)を下し、72年以来47年ぶり優勝に王手。72年大会では2回戦で慶大を1-0で下しており、同大会での対戦も47年ぶりとなる。

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中村は三塁を蹴ると、頭から本塁へ突っ込んだ。2-1の6回、先頭で中前打。犠打で二塁に進んでいた。「次の1点が流れを決める。絶対かえるぞ」。すると、3番柳町が中前打。走りながら、ネクストの郡司が「来い!」と叫ぶのが聞こえた。行くしかない。微妙なタイミング…は違った。余裕を持って生還。「滑った後、キャッチャーが前に出て捕球してましたね」。胸に赤土がついたユニホームで照れ笑いを浮かべた。

迷わず突っ込むほど、気持ちが乗っていた。そんな中村を、大久保秀昭監督(50)はベンチの先頭で出迎えてくれた。チームの合言葉は「監督を胴上げする」。秋のリーグ戦最終週の早大1回戦に勝ち、3季ぶりの優勝を果たしたが、そこから2連敗。同戦での勝ち点を落とし、胴上げのタイミングを逸していた。大久保監督から「神宮大会で日本一になって、俺を胴上げしてくれ」と言われた。今季で退任し、JX-ENEOSの監督に復帰する指揮官に有終の美を-。最高のモチベーションだ。

その気持ちを、中村は先頭で示した。初回、城西国際大・舘のツーシームを左翼席へたたき込み「最高の仕事ができました」。今秋リーグ戦は打率1割7分1厘で、レギュラー定着後最低。ドラフトは指名漏れした。苦しむ姿を見た林前助監督から「シンプルに、バットにボールをぶつければいい」とアドバイスを受け復調。日本一へ照準を合わせ、大会に臨んでいる。

胴上げのことを振られた大久保監督は「都市対抗(優勝3回)で慣れてますので、別に」と言って口元を緩め、続けた。「私としては、彼らを日本一にしたい」。監督も、選手も、目指すゴールは同じ。あと1勝だ。【古川真弥】