東大は22日、東大球場で「4年生VS1、2、3年生」による恒例の引退試合を行った。11-10で4年生が勝利。主将を務めた辻居新平外野手(4年=栄光学園)は新主将の笠原健吾内野手(3年=湘南)と肩を組んだ。17年秋から42連敗。学生野球後半は負けっぱなし。それでも「後悔はありません」と断言できた。

創部100周年。リーグで唯一優勝がない東大の「挑戦」を追いかけた。連載開始にあたり、素朴な疑問があった。なぜ、ここまで勝てないのに野球を続けられるのか? ユニホームを脱いだ辻居にぶつけた。

辻居 勝つ余地がある限り、勝ちに向かって頑張れる。勝てると思ったから。だから、負けたら悔しいし、負ける自分じゃないと思ってやってきました。

3年の春、将棋の羽生善治九段の言葉を知った。

「何かに挑戦したら確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続しているのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている」

辻居 何のために野球をやるのか、考えてました。その時、羽生さんの言葉を見て、これが東大野球部だと。報われないことや裏切られることも多い。それでも、負けるわけないと思って練習する。「挑戦」こそ東大野球部の真骨頂です。

ウソか誠か分からない。記者が東大OBから聞いた話。ひと昔前、ある強豪大から所属リーグの入れ替えを提案された。もちろん、断った。1925年(大14)の連盟加盟時、長与野球部長は部員に2つの覚悟を求めた。必ず1度は優勝すること。そして、どんなに苦しくても自ら連盟を脱退しないこと。「勝てないのに続ける」ではなく「勝つために続ける」。東大野球部のDNAだ。

くしくも、笠原は来季チームスローガンに「挑戦」を選んだ。「101年目。挑戦しないといけない」。辻居は「1試合、1球を大事にやってこそ、いい野球人生につながる」とエールを送った。【古川真弥】