国鉄、巨人などで活躍したプロ野球史上唯一の400勝投手で、昨年10月に急性胆管炎による敗血症のため86歳で亡くなった金田正一さんのお別れの会が21日、東京・千代田区の帝国ホテルで行われた。巨人原辰徳監督(61)が弔辞を読み、長嶋茂雄終身名誉監督(83)、ソフトバンク王貞治球団会長(79)、元楽天監督の野村克也氏(84)ら球界関係者約500人が参列した。一般献花には約400人が集まり、多くの人たちがカネやんとの別れを惜しんだ。

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長男で俳優の賢一さん(58)が謝辞を述べ、父正一さんの素顔を語った。「86年の生涯が長いのか短いのか僕には分かりませんが、太く生きたことだけは確信して言えます」。よく「豪快なお父さんでしたね」と言われるが、家庭ではそんなことはなかったという。「電気風呂などその時々の新しいものを買い、食事に気を使い、真夏でもクーラーをつけず長袖で寝ていました」と体に細心の注意を払っていた。「僕らには豪快なところは見せたくなかったのか。私たちが知っているのは父の後ろ姿。ぜひ、皆さんに父の前からの姿を教えていただければ」。

巨人長嶋終身名誉監督の来場には「私たちはうれしいのですが、オヤジは心配して上から下りてくるのでは。『シゲ、無理するな』と。父と長嶋さんの間には、我々には計り知れない友情があると思います」とおもんぱかった。握手を交わした長嶋氏からは「やあ、賢ちゃん」と力強く握りかえされた。

四十九日の法事の際、僧侶から「普通は、あちら側でしばらく時間を過ごすのですが、あなたのお父さんは、もう転生されているかもしれませんね」と言われた。賢一さんは「18年先、ドラフトで左のいいピッチャーが出てきたら、オヤジだと思ってください」と穏やかに話した。【古川真弥】